【宿日直勤務】奈良病院、超過勤務手当支給で改善/産科医5人から9人に
奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科の医師2人が2004−05年に従事した宿日直勤務について、割増賃金を支払うべき通常勤務の状態だったとして奈良県に計約1500万円の支払いを命じた一審・二審の判決が確定した。同県医療政策部の高木亮部長は取材に対し「県の主張が認められず、大変に残念」とコメントした。
同県は、宿日直中の勤務の全てが割増賃金の支払い対象となる「労働時間」に該当するとの判決は容認できないとして最高裁に控訴していたが、最高裁が2月12日、「上告審として受理しない」との判断を下したため、事実上、一審、二審の判決が確定した。
高木部長によると奈良病院ではすでに07年6月から、宿日直勤務中の医師が緊急外来や手術などの通常業務に従事した場合、宿日直手当に加え超過勤務手当を支給。産科医も04年の5人から9人に増加したという。高木部長は「司法の判断も出たので、同病院の救急医療などの体制について検討したい」とコメントし、引き続き検討していく考えを示した。
●宿日直勤務の許可要件、「軽度・短時間に限る」など
奈良病院は、労働時間や休憩などについて労働基準法上の規定の適用外となる「宿日直勤務の許可」を労働基準監督署から受けていた。許可条件は▽常態としてほとんど労働がなく原則として通常の労働の継続でない▽宿日直1回当たりの賃金は、従事者の1日平均賃金の3分の1以上▽宿直は週1回、日直は月1回が限度─の3つ。これに加え、医師や看護師の場合は▽通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後である▽夜間業務は「病院の定時巡回」「異常事態の報告」「少数の要注意患者の定期検脈」「検温」など、特殊な措置が不要な「軽度」または「短時間」の業務に限る▽緊急の診療・入院、患者の死亡や出産などがなく、夜間に十分な睡眠がとれること−の3項目が定められている。
●改善策の提示など丁寧な指導/厚労省労基局
厚生労働省労働基準局監督課は「急性増悪への対応が発生する可能性があれば通常勤務状態とみなされる」と説明。宿日直勤務に関しては「許可の基準に合わせるのか、割増賃金を支払ってもらうかのどちらかを是正指導することになる」とした。ただ、一方で「地域医療確保の観点などから『法律違反だから一切、働いてもらっては困る』とすることは、なかなかできない」との認識も示した。その上で「そういうケースの場合は具体的な改善策を提示するなど、継続的な指導を丁寧に行っている」とした。
同課のまとめでは、11年1−12月の間、病院や診療所が該当する「医療保健業」への定期監督として労基法の順守状況を確認した1966件のうち、何らかの違反が指摘されたのは1543件。主な違反事項は「労働時間」826件、「割増賃金」604件、「就業規則」535件などとなっている。(2/18MEDIFAXより)