【定期接種】定期接種化で市町村、数百億円の負担増へ/3ワクチンで交渉大詰め
2013年4月にHPV、Hib、小児用肺炎球菌の3ワクチンが定期接種化された場合、予防接種の実施主体である市町村の負担が数百億円程度、増える見通しだ。財政状況の厳しい中、全国町村会はこの点を懸念しており、国が責任を持って財政措置するよう要望している。年末に向けて、ワクチン財源をめぐる国と自治体の協議が大詰めを迎える。
厚生労働省によると、3ワクチンの年間接種費用は約1200億円。国の補正予算事業で国と市町村が接種費用を45%ずつ負担している。残り10%の費用は、市町村が負担した上で、被接種者から実費を徴収できることになっているが、ほとんどの市町村が費用を持ち出している。市町村が負担する45%の接種費用は地方交付税により財源が保証されているため、交付を受けた市町村では負担は10%となる。
一方、予防接種法が改正され、13年4月から3ワクチンが定期接種化した場合、3ワクチンに対する市町村の財源負担は重くなる。麻しん・風疹などの定期接種の仕組みでは、地方交付税措置は低所得者の接種費用相当額となっており、接種費用全体の30%程度。残る70%は市町村が負担した上で被接種者から実費徴収できる仕組みだ。ただ、ここでも多くの市町村は実費を徴収していない。このため3ワクチンが定期接種化されると自治体の費用負担割合は70%に上がることになる。
3ワクチンの接種費用を年間1200億円とした場合、定期接種化後の全市町村の負担額は840億円。全市町村の現在の負担割合を10%とすると、負担額は現行の120億円から720億円増となる計算だ。実際には、市町村の財政状況によって地方交付税が手当てされる場合と、されない場合があり、負担割合には幅があるが、いずれにしても数百億円規模の負担が市町村側にのしかかる。財政難から実費徴収に踏み切る自治体が出てきてもおかしくない。全国町村会は12年7月、自治体の財政力によって格差が生じないよう、国が責任を持って財政措置してほしいと政府に要望した。
●予防接種法改正案、提出は通常国会か
ワクチン財源をめぐる市町村と国の綱引きは、これから年末にかけて本格化する。厚労・財務・総務3省は3ワクチン定期接種化の財源として年少扶養控除の廃止などに伴う地方増収分(約900億円)の一部を当てにしている。今後の調整で市町村の理解が得られるかどうかがカギになる。政府は年末の予算編成までに財源問題を決着させたい考えだ。
厚労省は、財源問題にめどが付くまで予防接種法改正案を国会提出しない方針で、法案の提出時期は、13年1月に召集される通常国会となる公算が大きい。年度内に予防接種法改正案を可決し、予定通り4月には定期接種を増やしたい考えだ。(10/15MEDIFAXより)