【外科】外科医の労働環境改善に「総合的な施策を」/関連13学会が見解  PDF

【外科】外科医の労働環境改善に「総合的な施策を」/関連13学会が見解

 日本外科学会や日本救急医学会、日本消化器外科学会など外科系関連13学会で構成する外科関連学会協議会は4月11日、福岡市内で開いた記者懇談会で、外科医の労働環境改善の動きを加速させるには、初期臨床研修医制度での外科の必修化や看護師の特定行為の研修制度法制化など、医療制度改革とセットにした総合的な施策が必要との見解を発表した。過去2回の診療報酬改定による手術料の増点で、外科医の待遇改善を進める動きが出てきたことに一定の評価はできるとしながらも、手術件数が増える現状の中で、外科医の労働時間は減少せず、依然として厳しい環境が続いていると指摘した。

 「外科医の総意」と題した労働環境改善策は▽次期診療報酬改定での手術料増額▽各病院での外科手術に対する正当な評価と手当▽メディカルクラーク、コメディカルの充実▽初期臨床研修制度の外科の必修化▽看護師の特定行為の研修制度法制化▽医療安全調査機構設立─の6点。外科系関連学会の会員を対象に2012年10月30日−12月10日に行った実態調査の結果に基づいて検討してきた。調査は日本外科学会の会員など2万8000人を対象にインターネットを使って実施した。有効回答数は8316人(回収率29.7%)。

 調査結果によると、病院の手術件数は12年度改定後に全体的に6%強増加している。外科医の1週間当たりの労働時間数は、日本外科学会が11年度に実施した調査(11年度調査)の77.1時間を上回り78.5時間だった。当直回数も改定前(11年度調査)の2.3回から2.4回に増えたほか、当直明けの手術参加が「いつもある」との回答が、改定前(11年度調査)の31.3%から36.0%に増えるなど、当直明けの手術参加が日常化している実態が続いている。当直明けの手術参加については9割の外科医が、手術の質を低下させ医療事故につながると不安を抱いていた。「当直明けは休み」など一定のルール作りを求める意見もあった。

 12年度診療報酬改定では、手術料などのアップで病院全体の収支バランスは改善し、外科系診療科の収入も増加した。病院長を対象に、外科に特化した待遇改善策を講じているか聞いたところ、改定前(11年度調査)の12.3%から34.3%にほぼ3倍増という結果になった。

 ただ、待遇改善策は、金銭的手当だけでなく医療クラークの配置や当直・オンコール制の回数減少など多様化している。外科医の平均年収は改定前(11年度調査)の1538.4万円から、改定後は1456.3万円に下がり、年収の30%はアルバイトなどで得ていた。

 こうした調査結果から日本外科学会の富永隆治理事(九州大教授)は「診療報酬改定による増収が、病院の経営基盤を押し上げることに貢献したことは調査結果からも明らかだ。外科に特化した待遇改善策も進み出そうとしていることは評価できる」とした。その上で、外科医の数が大幅に増えない現状で、増加する手術件数に対応していくには、診療報酬改定の手術料の増額はもちろん、特定看護師などの中間職種の育成が急がれると指摘。「若手医師に外科に参加してもらうには、臨床研修制度の見直しに際して外科の必修化が不可欠だ」と述べ、総合的な戦略が必要と強調した。(4/12MEDIFAXより)

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