【在宅医療】在宅医療は「後方支援」や「集合住宅」が課題/日医・三上常任理事ら  PDF

【在宅医療】在宅医療は「後方支援」や「集合住宅」が課題/日医・三上常任理事ら

 2025年の社会保障・税一体改革に向け、在宅医療の後方支援に対する評価や、集合住宅で提供される医療に対する評価の在り方が課題に─。2月9日、東京都内で開かれた日本医療マネジメント学会医療連携分科会(医療と介護の連携について)のパネルディスカッションで、日本医師会の三上裕司常任理事、全日本病院協会の神野正博副会長、日本慢性期医療協会の武久洋三会長らが指摘した。

 三上常任理事は「在宅で医療機関と同等のサービスを提供するとなると、その費用は病院医療以上にかかることがすでに立証されている。在宅医療は生活の質の向上を目指すものだが、それが物理的に無理であれば施設(医療機関など)や集合住宅などでの対応策を打ち出していくことが必要だ」と指摘した。

 12年度診療報酬改定で導入された「機能強化型」の在宅療養支援診療所(在支診)に関しては「在宅医療は医師と患者の信頼関係の下に複数の在支診の連携でつくっていくべき」とした上で、「そこには介護が必要で、いわゆる訪問介護サービスがベースになる。このマンパワーを確保できるかどうかが、在宅医療サービスの成否につながる」と述べた。

●病棟単位か傾斜配分か
神野副会長は「在宅で介護をするマンパワーの確保を考慮すると、集合住宅のような施設が必要だ。今後、都市部での高齢人口の増加を考えると、街づくりを含めた制度設計を進めていくことが重要だ」と指摘した。一般病院については▽在宅医療支援▽認知症対策▽総合診療─の3機能に前向きに取り組んでいくことが必要とし「今後の一般病院では、急性期、慢性期などの病院機能区分をせず、病棟別に患者の病態に合った配置要件や機能評価を進めていくよう検討していくべきだ」と指摘した。

 これに対して三上常任理事は「(看護師などの配置は)病棟単位で何対何という設定よりも、(病院単位で)傾斜配分ができるようするべきだ」とし、神野副会長の病棟単位への切り替えを進めるべきとの提案に異論を示した。

 一方、武久会長は在宅医療の充実は必要な施策とし「在支診と近隣の在宅療養支援病院を含む病院が“在宅医療後方支援病院”としてタイアップしていく体制が必要だ」と指摘し、在宅医療後方支援病院が地域包括支援センターの役割も担っていくことが必要とした。

 日本看護協会の菊池令子副会長は「149万人の看護師のうち80%は病院勤務で、訪問看護は2%程度にすぎない。訪問看護については、処遇の改善だけでなくキャリアパスの確立なども検討課題になる」とし、訪問看護ステーションの大規模化などとともに課題に挙げた。

 会場からは、退院時共同指導料の算定要件について「退院後の在宅療養を担う医師または医師の指示を受けた看護師等が、患者入院先の医療機関に赴き、共同で情報提供などを行うことは、現場では極めて大変。年間10件程度が限界」との声があった。(2/13MEDIFAXより)

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