【国民会議】医療システム、「病院完結型」から「地域完結 型」へ/国民会議
8月2日の社会保障制度改革国民会議で、権丈善一委員(慶應大教授)が起草委員を務めた医療・介護分野の報告書各論案が提示された。各論案では始めに、今回の医療・介護制度改革が行われる背景について解説。急速な高齢化の進展により、必要とされる医療は従来の「病院完結型」から「地域完結型」に変わらざるを得ないと指摘し、国民皆保険制度を守り通すためにも、「医療そのものが変わらなければならない」と強調した。
主に青壮年期の患者を対象にする医療は救命・延命、治癒、社会復帰を前提とした「病院完結型」だったが、老齢期の患者が中心となる医療は病気と共存しながらQOL(Quality of Life)の維持・向上を目指す医療になると指摘。今後、必要とされる医療は、従来の「病院完結型」から、患者の住み慣れた地域や自宅で生活する「地域完結型」に変わらざるを得ないと説明した。
医療・介護ニーズが増大する中で将来にわたって必要なサービスを確実に提供するためには、安定財源の確保と同時に、医療・介護資源を患者ニーズに適合させ、国民の負担を適正な範囲に抑える努力を継続しなければならないとの考えも示した。社会保障制度改革推進法には皆保険制度の維持が規定されており、皆保険を守り通すためにも、医療そのものが変わることを強く求めた。
保険料や税の「能力に応じた負担」についても言及した。医療・介護サービスの効率化を図っても、その給付費が増加していく中で国民皆保険を維持すれば、国民経済の中で公的サービスの規模が増すことになると指摘。保険料と税の負担については、徴収と給付の両側面で、これまで以上に能力に応じた負担の在り方や公平性が強く求められるとしている。
国民の「望ましい医療」に対する意識改革の必要性も指摘した。医療現場を守るためにも、医療のフリーアクセスは「いつでも、好きなところで」という解釈から「必要な時に必要な医療にアクセスできる」という意味に変えるべきとし、そのためにもゆるやかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及が必須になるとした。
「ご当地医療」の必要性も指摘した。これまでの国民会議の議論を通じて、地域によって人口動態や医療・介護の需要のピークが大きく異なる実態が確認できたとし、医療・介護サービスの在り方を地域ごとに考えていく方向性を提示した。(8/5MEDIFAXより)