【国民会議】伊藤委員「将来は混合診療を」/国民会議「むしろ支出増」の声も
社会保障制度改革国民会議(会長=清家篤・慶應義塾長)は6月3日開かれ、経済財政の視点から見た社会保障改革をテーマに伊藤元重委員(東京大大学院教授)がプレゼンテーションし、将来的な課題として保険医療の根幹を守るために“混合診療”を進めることが「必要となるかもしれない」と提案した。委員からは、現行の保険外併用療養費制度との関係性を問う声や、混合診療の全面解禁でむしろ公的医療支出が増える可能性があるとの指摘など、牽制する意見が出た。
経済財政諮問会議の民間議員でもある伊藤委員は、社会保障改革抜きに財政健全化を実現することは不可能だと指摘。社会保障の改革メニューは現状でも数多く出されており、対応可能なものはすぐに実施し、利害調整や世論形成に時間を要するものについても、すぐに検討は始めるべきだと求めた。
●「受診時定額負担」の再検討も
速やかに対応できる取り組みには、70−74歳の自己負担を2割にすることや、後発医薬品の使用促進に向けた具体策の導入を挙げた。「政治的な合意が得られれば」と前置きした上で、かつて議論され導入が見送られた経緯がある「受診時定額負担」の再検討も例示した。成果が出るまでに時間がかかるが、すぐにでも検討・導入を始めることとしては、保険者機能の強化を目的とした国保運営の都道府県化を挙げた。
“混合診療”は「将来、より大胆な改革が求められるときに必要な検討」として例示。提出した資料には「混合診療を進めていき、保険医療でカバーする部分を限定する、というのは批判が多いと予想されるが、将来的に日本の保険医療の根幹を守るために必要となるかもしれない」と記した。このほか、フリーアクセスの制限を前提に、ゲートキーパー制度の導入を検討することも示している。
伊藤委員はこうした制度改革を挙げた上で、税と保険料の役割分担をどう考えるかや、公的財源でカバーすべき部分とそうでない部分の境界の設定などを、現時点で固めておくべきだと提言した。
“混合診療”については宮武剛委員(目白大大学院客員教授)が反論。保険医療を守るための導入という考え方について「有効性や安全性が疑わしい医療にも保険給付をすることになれば、むしろ公的な医療支出が増える可能性もある」と慎重な検討を求めた。権丈善一委員(慶応大教授)も、保険外併用療養費制度との関係をどう捉えるかが重要との趣旨の発言をした。
年金分野の議論が中心だったが、国民会議は次回10日の会合で医療・介護分野を再び集中的に議論する予定。その後は、年金と少子化対策を含んだ4分野の議論を総合的に進めていく。(6/4MEDIFAXより)