【医療法】医療法改正案、医療部会で議論開始/秋の臨時国会に提出へ
社会保障審議会・医療部会(部会長=永井良三・自治医科大学長)は6月20日、厚生労働省が秋の臨時国会への提出を想定している「医療法等の一部を改正する法律案(仮称)」について議論を開始した。厚労省は同改正案に盛り込む12項目を提示。委員からは、病院病床の機能分化に向けて在宅医療の重要性について意見が集中した。
山崎學委員(日本精神科病院協会長)は「在宅医療推進の担い手が、病院勤務医なのか診療所の医師なのかが明確でない」と指摘。田中滋部会長代理(慶応大大学院教授)は「(在宅医療の推進は)医療計画だけでは不十分。市町村が担う地域包括ケアシステムとのリンクを明確にすべき」と述べた。智英太郎委員(健保連理事)も「サービス提供面で必要十分な供給が間に合わなくなる」と早急な対応を求めた。
今村聡委員(日本医師会副会長)は、在宅医療の必要数と現時点で提供できる数、5年後や10年後の提供可能数の推計などを把握して初めて、具体的な対策が検討できるとし、現状については「地域の医師会で把握しなければならない」と述べた。
●都道府県の権限強化も俎上
厚労省医政局総務課の吉岡てつを課長は「都道府県に『こういう権限が必要』ということであれば、今回の改正で検討する」と述べ、医療部会での議論の結果次第では医療提供体制に関する都道府県の権限強化も同法案に盛り込む方針を示した。
●地域医療ビジョン策定、前倒しに疑義
病院病床機能分化の推進に向けた報告制度の運用開始と、報告制度で収集する情報に基づいて都道府県が地域医療ビジョンを策定するまでのスケジュールが、当初の計画より前倒しとなったことには疑義が出た。
西澤寛俊委員(全日本病院協会長)は、本来は報告制度で集まる情報を十分に吟味した上で、地域医療ビジョンの策定に向けて国が示すガイドライン(GL)に反映させるべきだとし、スケジュール前倒し後の詳細な工程表の提示を求めた。中川俊男委員(日医副会長)も、報告制度の運用開始前に国がGLを策定することになった点を問題視。「なぜ拙速に急ぐのか」と述べ、報告制度の運用後にGLを策定する当初のスケジュールでは遅いとされる理由について説明を求めた。
吉岡課長は「これからは医療の充実化と効率化を同時に進めなければならない」と述べ、早急な対応が必要として理解を求めた。
●医療法等改正案は12項目が柱/厚労省
厚生労働省が6月20日の社会保障審議会・医療部会に提示した「医療法等の一部を改正する法律案」の柱となる12項目は次の通り。
▽病院病床の機能分化・連携を推進するための報告制度の創設▽在宅医療推進のため医療計画に達成すべき目標などを記載するよう義務づけ▽特定機能病院の承認の更新制導入▽医師確保対策として地域医療支援センター(仮称)設置を都道府県の努力義務とする規定を創設▽看護職資格保持者を対象に都道府県ナースセンターへの届出制度を創設▽勤務環境の改善に自主的に取り組む医療機関への支援として医療勤務環境改善支援センター(仮称)を創設▽チーム医療の推進として特定行為実施のための研修制度の創設と診療放射線技師の業務範囲拡大、歯科衛生士の業務実施態勢見直し▽医療事故調査制度の創設▽医療法に臨床研究中核病院(仮称)を位置づけ▽一定の条件下における教授・臨床研究目的の診療の容認など、外国医師等の臨床修練制度の見直し▽歯科技工士国家試験の見直し▽持分なし医療法人への移行の促進。(6/21MEDIFAXより)