【医療保険部会】国保の都道府県化に慎重論も/医療保険部会  PDF

【医療保険部会】国保の都道府県化に慎重論も/医療保険部会

 厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会(部会長=遠藤久夫・学習院大教授)は5月10日、社会保障制度改革国民会議の議論から浮上した論点について検討した。主な議題は後期高齢者支援金への総報酬割の導入と、それにより生じる財源の使い道のほか、国保運営の都道府県化の是非。4月の国民会議では国保運営の都道府県化に多くの委員が賛同したが、知事会の代表などが委員に名を連ねる医療保険部会では拙速な都道府県化に異を唱える慎重論が出た。

 国保保険者の都道府県化に議論が及ぶと福田富一委員(全国知事会社会保障常任委員会委員長)が挙手し、不満を吐露するように発言した。「国民会議では構造的問題の抜本解決を図った上で検討すべきと主張した。しかし、今の国民会議は都道府県を保険者とする結論ありきだ。総報酬割でできた財源を充当するのは一つの有効な手段だが、各保険者の理解が必要であり、それで持続可能な制度が実現するとは考えにくい」と主張。齋藤正寧委員(全国町村会副会長)の代理で出席した久保雅氏(同会行政部長)も「構造問題を解決せずに都道府県が保険者になるだけでは、巨大な赤字団体をつくるだけ」と同調した。

 都道府県では保険者機能を果たせないのではないか、という視点からの意見も出た。岩村正彦部会長代理(東京大大学院教授)は「保険料の付加や徴収のほか、地域包括ケア化を進めている介護保険との整合性など、解決すべき点が多い」と指摘。齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は「市町村が行っているきめ細やかなサービスが広域化してもできるのか。サービスの担保が前提」と述べた。一方で横尾俊彦委員(全国後期高齢者医療広域連合協議会長)が「規模が大きくなるとサービスの質が落ちるというのはおかしい。マネジメントの問題だ」と反論する場面もあった。

 「市町村国保は破綻寸前」(岡誠也委員=全国市長会国民健康保険対策特別委員長)など、国保運営の逼迫は共通認識だが、医療保険部会ではすんなり都道府県化とはいかない情勢だ。

●総報酬割の財源、意見割れる
 総報酬割を導入した場合に生じる2000億円規模の財源の使途については意見が割れた。国民会議で多くの賛同者が出た国保財政に充てる案について「大変心強い。限られた財源の中での有力な解決策の一つ」(久保氏)とする一方で、「国保に充てるのは理不尽」(白川修二委員=健保連専務理事)、「被用者保険の財政基盤の強化に必要」(岩村部会長代理)などさまざまな意見が出た。(5/13MEDIFAXより)

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