【医療保険】労災と健康保険の“すき間”問題で厚労省案/医療保険部会
厚生労働省保険局は11月28日の社会保障審議会・医療保険部会で、労災保険と健康保険の“すき間”を埋める見直し案を提示した。シルバー人材センター会員やインターンシップの救済が目的。
現在の労災保険は「労働者」の「業務上」の事故に対して給付されるが、業務の「請負」では雇用関係がないため、労災保険の給付対象にならない。また、健康保険は「業務外」の負傷に支払われるため、「業務上」で起きた負傷には給付されない。こうした制度上の“すき間”に陥った人から訴訟も起きていた。
この問題に対処するため、厚労省は、西村智奈美厚生労働副大臣らがプロジェクトチーム(PT)で対策を検討。10月29日には「健康保険における業務“上・外”の区分を廃止し、シルバー人材センターの会員やインターンシップなど、労災保険の給付を受けられない人は健康保険の対象にする。その上で医療保険部会で審議し、結論を得る」とする方針を取りまとめていた。
医療保険部会で厚労省保険局は、同PTの取りまとめのほかに具体的な見直し案も提示。まず労災保険と健康保険の適用関係を整理するため、「労災保険優先」の原則を再確認する疑義解釈通知を出す方針を示した。健康保険法では、労働者が業務で負傷した場合、まず労災法を適用し、健康保険は給付しないことが定められている。保険局は「労災が疑われる事例で健康保険の給付が申請された場合、労災保険の請求を促し、健康保険の給付を留保できる」という疑義解釈通知を出す考え。
労災保険の給付対象にならない役員が業務で負傷したケースについては、「これまで通り5人未満の法人の役員などのみ健康保険から給付する」案と、「全役員を健康保険で給付する」案を並べて提示した。前者では、労災保険と健康保険でカバーできない人が残ってしまうため、中小企業が任意で特別加入できる労災保険を周知していくことになる。後者では、使用者側の補償は全額使用者側で負担すべきという考え方となじみにくいなどの問題点が残る。
このほか、労災保険と健康保険がともに支給されなかった過去の事例にもさかのぼって救済する必要があるかどうかや、法改正の是非などが論点に上った。(11/29MEDIFAXより)