【医療保険】保険会社が医療機関へ保険金直接支払い/金融庁が検討
民間保険会社が医療機関などに直接保険金を支払う仕組みの是非に関する議題が、金融庁の金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ(WG)」で浮上している。現行の仕組みでは患者が一部負担金を窓口負担し、後日、保険会社から保険金を受け取っているが、WGでは、保険契約者本人の同意を前提に、保険会社が医療機関に直接、保険金を支払うサービスを想定している。
保険契約者の保護を目的とした「保険業法」では、保険金の支払い方法に関する規定は定められていない。一般的には、契約時に決めた保険金受取人(主に被保険者など)に支払われており、保険会社から医療機関への直接支払いが可能かどうかは法律上、明示されていない。保険会社からは金融庁に対して「直接支払いサービスが可能になれば保険契約者のメリットが大きく、こうした支払い方式が可能になるよう明示してほしい」といった要望が寄せられていた。
金融庁は8月24日のWGで、保険金直接支払い方式のイメージ図を載せた資料を提出し「契約した保険金を代理受領するものであり、保険契約者などの同意があれば特段禁止されるべきものではないと考えられるが、保険契約者などの保護の観点から、特に留意すべき点があるか」との論点を提示していた。議論では、出席した法学者が「民法上は何の問題もないような気がする」としながらも、「米国の医療保険のように、保険会社と病院が組んで医療をコントロールするといったことも考えられる。保険会社とサービス提供者の関係がどういうものか十分検討した上で考えることが重要ではないか」と課題を指摘した。医療機関への直接支払い方式は、保険商品の見直し論議の一部にすぎず、この法学者以外に重要な指摘は出なかった。
●細部は未定、来夏まで議論
保険金の直接支払い方式は、まだ細部まで固まっておらず、資料では、保険金でカバーする範囲を示していないが、金融庁は一部負担金などを想定している。金融庁総務企画局企画課保険企画室によると、例えば患者に8000円の窓口負担金が発生し、患者が1万円の保険金を受ける契約になっていたとする。この場合、医療機関は保険会社に8000円を請求し、患者(保険契約者)は差額の2000円を受け取るイメージだという。ただ、窓口負担額が8000円で保険金支払い額が5000円のような場合、医療機関側が患者と保険会社の双方に請求するのか、などの細部までは詰まっていないという。
金融庁は来夏ごろまでに議論を取りまとめ、運用方針を固めたい考えだ。(10/10MEDIFAXより)