【医師法】警察への届け出不要、21条改正で2案/日本医療安全調査機構
日本医療安全調査機構の「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方に関する企画部会」(部会長=矢作直樹・東京大大学院教授)は、診療に関連する事故の原因究明を行う「第三者機関」に届け出・報告すれば、警察への届け出は不要とする枠組みが必要との報告書をまとめた。医師法21条の改正に向け2つの案も示した。10月19日の同機構運営委員会(座長=樋口範雄・東京大大学院法学政治学研究科教授)に提出した。
同機構は、医療事故の原因究明と再発防止を目的に、診療行為に関連する事故の原因究明を行うモデル事業を実施している。企画部会では、医療事故を調査する第三者機関の在り方や、全国化に向けた事業の組織化・安定化策などを検討してきた。
企画部会の報告書では「第三者機関で取り扱うのは当面、死亡事故に限定する」とした上で▽A案=第三者機関へ届け出る(報告する)ことで、医師法21条の異状死体の届け出義務を行ったことにする▽B案=第三者機関へ届け出る制度の創設により、医師法21条の異状死体届け出義務の対象事例から診療関連死が除外されることとする─の2案を提示。両案ともに、医師法21条を改正し、第三者機関に届け出・報告することで、異状死体届け出義務を果たすことになるとの考え方だ。
運営委の樋口座長は「B案の場合、診療関連死の定義付けが必要になる」と説明。運営委員からは「B案はやりにくい」とする意見が複数上がった。
報告書では、調査体制として▽院内で調査分析した結果を第三者機関に報告する「院内型」(診療所や中小規模病院の場合は、医師会や大学病院など他の医療機関と連携して調査分析した結果を報告)▽院内調査に第三者機関から調査評価医を派遣し調査分析する「協働型」▽第三者機関が解剖調査から臨床評価まで全ての調査分析を実施する「第三者型」─の3パターンを示した。医療機関に3パターンのいずれかを選択してもらう構想で、調査体制として最低でも年間約5億円が必要との試算も示した。
●21条改正前に省令改正も一案
医師法21条の改正については、政局が不安定な現状では現実的ではないとの見方もあった。児玉安司委員(新星総合法律事務所弁護士)は「日本医療機能評価機構が医療事故の収集事業をやっているが、法的根拠は政省令。医療法施行規則に日本医療安全調査機構に関わる規定が盛り込まれ法的根拠ができると予算が付くようになる。公益性を持つ活動としても認知される」と指摘。法改正だけにこだわらずに戦略を変更すべきとした。
同機構は、企画部会がまとめた報告書に基づき具体的な検討を進めるため「推進委員会」を設置して2013年度以降も議論を継続する方針だ。(10/22MEDIFAXより)