医師数の大幅増に慎重姿勢/原医政局長
厚生労働省の原徳壽医政局長は10月5日、厚労省と日本医師会が主催する社会保険指導者講習会で講演し、今後の医師数の大幅な増加に慎重な姿勢を示した。医師の確保には女性医師の就労支援や子育て支援のほか、業務負担を軽減するために医療クラークの活用などを進めるべきと提言した。
原局長は少子高齢化を迎える中で、疾病のある高齢者が急激に増加すると分析。団塊世代の高齢化で「間もなく(高齢患者の)増加が始まる」と指摘し、その対応を大きな課題に挙げた。対応するために病床を増やすことは現実的でないと主張し、効率的に対応するためには機能分化と医療関係者の確保が必要とした。
医師数の増加については必要性を認めた一方、「医師を育てるには後のことを考えないといけない。むやみに医師を増やすと将来、失業することになる。医師は増やすが、現場を離れた女性医師の就労支援、子育て支援が必要だ」と述べた。医療クラークや看護職の活用で負担軽減を図る必要があるとも提言した。
機能分化については、有病期間の長い疾病が増えると予測しリハビリテーションの重要性を強調。「高機能な治療は集約して効率よくする。患者の集約化も必要だ。効率的に回さないと対応できない」と述べ、機能分化に理解を求めた。
●改定・制度改正は2025年への道/宇都宮医療課長
講習会では、厚労省保険局医療課の宇都宮啓課長も講演した。宇都宮課長は社会保障・税一体改革で示された25年の医療・介護の絵姿が今後の施策の根幹になると強調。「改定、制度改正のたびに国の方針が変わるという指摘があるが、今後の改定、制度改正は25年のあるべき姿を目指すためのものであるのは間違いない」と述べ、理解を求めた。
宇都宮課長は地域包括ケアの構築を重要な課題として挙げ、日常生活圏で適切な医療・介護のサービスを受けられる体制が必要になると説明。実現のために今後の診療報酬改定を行う方針を示した。受講者に対して「自分の病院、診療所が地域でどういう役割を果たすのかを念頭に置いて、先取りする気持ちで体制を整えてほしい」と呼び掛けた。
●国の方向性間違いなら「率直にただす」/日医・中川副会長
日医の中川俊男副会長は講習会の総括で「国の方向性が間違っていれば率直にただしていかねばならない」と述べ、国民皆保険を堅持していく姿勢を強調した。中川副会長は自民党時代の安倍内閣から現在の野田内閣までに政府が閣議決定した成長戦略などを紹介し、「新自由主義的考え方が強まっている」と指摘した。(10/9MEDIFAXより)