【処方箋】処方箋の電子化実現で報告書/厚労省・検討会
厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会(座長=大山永昭・東京工業大教授)は4月27日、厚労省内で開いた会合で、医療機関間での処方情報の共有に向けた方策などを盛り込んだ報告書「処方箋の電子化に向けて」を審議し、大筋で了承した。
報告書は検討会が設置した作業班が提出した。処方箋の電子化に先行して医療機関で医療情報の電子化に対応した環境を整備する必要があるものの、作業班では一定の準備期間の後に、同意が得られた圏域(2次医療圏単位)で紙の処方箋から電子処方箋への移行を進めることを提言。全国での完全移行を目指して、ある程度移行が進んだ段階で移行完了時期を決定する方針も示した。
報告書では処方箋電子化の実現により、医療機関が入力した電子的な処方情報に基づいて、薬局が疑義照会できるほか、後発医薬品への変更などの調剤業務が可能となり、調剤した結果の情報についても医療機関で次の処方情報の参考とするなどの活用ができるとした。医療機関や薬局では▽医療機関間や医療機関・薬局間での処方情報の共有・共用▽医薬品の相互作用・アレルギー情報の管理▽処方箋(紙)の偽造・再利用の防止―などにも役立つとした。
一方、患者にとっても遠隔診療を受けた場合に処方箋原本を電子的に受け取ったり、薬局に電子的に処方箋を提出したりできるほか、▽処方された医薬品履歴の自己管理▽救急医療や災害時での医療関係者による常用薬剤の把握―などに役立つ。処方箋の電子化と医薬品流通のトレーサビリティーが向上すれば、製造から患者の手に渡るまでの流通を管理できるようになり、医薬品による健康被害の把握や回収作業の迅速化なども期待できるという。
また、処方情報・調剤情報の突合により保険請求の点検が精緻化できるとの保険財政上のメリットや、臨床研究への応用にも期待を示した。
電子化実現に向けた課題も示した。国が実施すべき基盤整備としては▽電子コピーによる悪用を防ぐための技術・運用面の体制整備(一意性の確保)▽デバイスの配布(例えばICカード)▽薬剤受け取り履歴の管理―などを求めた。(5/1MEDIFAXより)