【再生戦略】「日本式医療」2020年までに海外市場20兆円/再生戦略で経産省
政府は7月31日に閣議決定した「日本再生戦略」で、医療サービスを含む海外のヘルスケア関連産業について20兆円規模の市場を日本企業によって2020年までに創出する方針を示した。経済産業省は、医療機関や民間事業者が現在、海外展開している5カ国8事業への事業性調査などの支援を継続。対象となる海外展開事業数を数倍程度に増やす方針だ。
新たな日本再生戦略の土台となった「新成長戦略」(10年6月閣議決定)は、外国人患者の受け入れ(インバウンド)を柱とする国際医療交流の方針を掲げた。今回の日本再生戦略では、日本からの海外展開(アウトバウンド)に主軸を移す方針へ大きくかじを切った。医療サービスと機器の一体的な海外進出で市場開拓を目指す。
経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課は「アウトバウンドで獲得できる市場は大きい」と見ており、全世界で500兆円規模とされる医療市場の中に「日本式医療(医療サービス・機器など)」を打ち出し、20兆円規模の新たな市場を確立したい考えだ。
効率的で質が高い日本式医療が一定程度受け入れられると経産省が想定する対象国・地域は、ロシア・中国・東南アジア・中東・中南米の各国。各国の総人口35億人のうち、4割を占める中間層(年間可処分所得5000ドル以上)の5%程度が、日本国内と同等の日本式医療(1人当たり医療費約28万7000円)を利用した場合、約20兆円の新市場を構築できる計算だ。
ヘルスケア産業課は、日本式医療による海外展開の具体例とて「中国・上海での糖尿病診療センター・プロジェクト」(想定市場規模約300億円)、「ロシア・ウラジオストクでの画像診断センター・プロジェクト」(同135億円)を挙げる。日本式医療の特徴は、チーム医療を生かした高品質で効率的な医療にあると捉えており、米国が強みを持つ高度で高額な医療と、タイなどに見られる一定程度の質を持つ低コストな医療の中間に、日本式医療が獲得できる市場があると見ている。
現在、経産省「医療機器・サービス国際化推進事業」で、調査などを継続しているプロジェクトは▽ロシア・モスクワでの日本式医療サービスの普及・啓発(総合南東北病院、東京内視鏡クリニック)▽同・ウラジオストクでの画像診断サービス提供(北斗病院)▽中国・上海での糖尿病治療サービス提供(テルモ、東京大)▽同・北京での高度健診サービス提供(麻田総合病院)▽同・北京での日中歯科医療技術協力研修センター(アジアデンタルフォーラム)▽ベトナムと中国での遠隔病理・画像診断サービス提供(国際医療福祉大)▽カンボジア・プノンペンでの高度医療サービス・医療教育提供の実証調査(北原国際病院)▽トルコ共和国での病院PPP(アイテック)―の5カ国8事業。(8/8MEDIFAXより)