【先進医療】新技術の保険導入、本当に医療費圧迫?/日医・中川副会長「検証を」
日本医師会の中川俊男副会長は1月16日、構成員として出席している厚生労働省の先進医療会議(座長=猿田享男・慶応大名誉教授)で、先進医療の保険導入が医療費増に寄与しているとの議論はすべきではないと主張し、厚労省に新技術導入による医療費全体への影響などを検証するよう求めた。厚労省は、正確に検証するのは難しいとの見解を示した。
会合で厚労省は、過去5年間の先進医療技術数や、対象となった患者数、費用総額などを示した。2011年7月1日−12年6月30日の1年間では、先進医療は553施設で実施され、保険給付部分と自己負担分を含めて先進医療にかかった費用の総額は約146億円だった。
●古い技術と置き換え「差額は誤差」
中川副会長は「医療界、診療側にも先進医療として実施されていたものが保険導入されることで医療費財源を圧迫すると思う人がいるが、新技術が保険導入されると古い技術と置き換わり、差額として医療費が増える部分は誤差の範囲だと思う」と述べ、厚労省に検証を求めた。さらに、「経済財政諮問会議をはじめ、いろんなものが行われようとしている。どうも誤解があり、特に財政当局筋は(新技術の保険導入が医療費を増大させていると)強調したがる。そんなことはないと医療課から言っていただきたい」と求めた。
山口俊晴構成員(がん研究会有明病院副院長)も「たとえば大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、保険導入されたことで手術を減らし医療費を下げている部分がある。そういう点を強調された方が(先進医療の)意義もより明らかになるのではないか」と指摘した。
●「正確な検証難しい」/宇都宮医療課長
厚労省保険局医療課の宇都宮啓課長は「新たな技術を保険導入する場合、先進医療Aの枠組みの場合と、先進医療Bの場合がある。また、既存技術でも改定に伴う点数の上下などがかなり複雑に関係している。(検証できるか)検討してみることはできるかと思うが、どの程度、正確かについては相当難しいのではないかと思う」と述べた。
●「個別のコスト分析を」/福井構成員
個別の医療技術ごとのコスト分析をすべきとの意見も上がった。福井次矢構成員(聖路加国際病院長)は「費用効果分析的な要素を出し、現在の医療と新しい方法との差を見ない限りは、本当の意味での分析はできない」と述べ、治療法ごとの分析が必要とした。福田敬構成員(国立保健医療科学院研究情報支援研究センター上席主任研究官)も「置き換えとしての差額を見ることも大事だが、臨床的価値があるかどうかも含めて費用対効果も見るべき」と述べた。
こうした意見に対し中川副会長は「個別の疾患治療、個別の医療技術についてのコスト比較ではなく、(各医療技術の)積み上げで医療費全体としてどのくらい影響するかが大事」と述べた。
(1/17MEDIFAXより)