【介護保険】訪問介護と通所介護は市町村事業へ/介護保険部会に素案
厚生労働省は11月27日の社会保障審議会・介護保険部会に、予防給付や費用負担の見直しを盛り込んだ「介護保険制度の見直しに関する意見書」の素案を提示し、大筋同意との見解が多数を占めた。山崎部会長と事務局の老健局は委員から出された指摘を踏まえ修正箇所を整理する。次回12月20日の同部会に最終案を提示し、意見書の取りまとめを行う。
素案では今回の介護保険制度改革の柱とされる「予防給付の見直し」について、同部会でおおむね意見の一致を見たと記載した。現行の予防給付のうち訪問介護と通所介護は、市町村が地域の実情に応じて効果的にサービス提供できるよう地域支援事業に見直すことが必要とした。現在の報酬以下とする事業費単価や、利用料の設定は市町村が行うことになる。市町村が事業を円滑に進められるようにガイドラインも策定する。
もう一つの柱である「費用負担の見直し」については、▽一定以上所得者の利用者負担の見直し▽補足給付の見直し▽低所得者の1号保険料の軽減強化―が必要とした。一定以上所得者の負担を1割から2割へ引き上げることについても、同部会でおおむね意見の一致を見たと記載。一定以上所得者については、厚労省から▽1号被保険者全体の20%に当たる年金収入ベース280万円以上▽1号被保険者の課税層の上位50%に当たる年金収入ベース290万円―の2案が提示されていたが、同部会で意見がまとまらなかったため、これまでの議論で出された他の提案を含めて列挙するにとどめた。
2017年度に廃止する介護療養型医療施設は、今回の制度改革の対象にはなっていない。ただ、同部会の議論で「介護老人保健施設等への転換を着実に進め、計画的に17年度末の廃止に向けた対応を取るべき」「医療ニーズを伴う要介護高齢者の増加などから廃止時期を延期すべき」とする意見が出たことを記載した。また、介護療養型医療施設は看取りやターミナルケアの実施が相対的に多く、一部の介護老人保健施設も同様の機能を持っていることも踏まえ、両施設が果たしている機能について引き続き検討が必要とした。
このほか▽介護納付金の総報酬割▽被保険者範囲の拡大▽要介護認定制度の適切な運営▽ケアマネジメントに対する利用者負担の導入―なども検討の継続が必要とした。
素案について大筋同意するとの意見が多数を占める中、勝田登志子委員(認知症の人と家族の会副代表理事)は「残念ながら、今回の介護保険制度の見直しの素案には当事者の声はほとんど反映されておらず、今後の介護保険制度や認知症施策に不安を隠せない」と批判した。(11/28MEDIFAXより)