【介護保険】市町村の役割拡大に懸念も/社保審・介護保険部会が再開  PDF

【介護保険】市町村の役割拡大に懸念も/社保審・介護保 険部会が再開

 社会保障制度改革国民会議が取りまとめた介護保険制度改革案を受け、社会保障審議会・介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)は8月28日、制度改革に向けて本格的な議論を開始した。厚生労働省は会合に、地域包括ケアシステムの構築に向けて▽介護保険事業計画▽在宅医療と介護の連携▽地域ケア会議▽ケアマネジメント―の論点を提示。市町村の役割を拡大させる改革案に対し、複数の委員から市町村の責任が過重になることを懸念する意見も出た。

 全国市長会介護保険対策特別委員長の大西秀人委員(高松市長)は市町村の立場から、制度改革の方向性について不安や懸念があることを吐露し、「全市町村で機能するシステムがつくれるのだろうか、まだよく分からないのが本当のところ」と述べた。一方で、「当事者としてうまくやっていける方向性を考えなければならない」との見解も示し、厚労省に明確な改革スケジュールの提示を求めた。

 全国老人クラブ連合会理事・事務局長の齊藤秀樹委員は「包括ケアの構築に向けた論点はいずれも市町村の責任が重いものになっている」と指摘。大きな責任を背負うことになる自治体の能力が懸念材料とし、「自治体をどのようにサポートするかが非常に大事」と述べた。

 淑徳大教授の結城康博委員も、今後の介護保険事業計画を策定する上で「一部を除いて市町村の『介護現場力』の低下は否めない」と述べるなど、介護保険制度の運営に関わる市町村の現状に問題意識を表明。今回の制度改革では市町村の『介護現場力』が問われることになるとし、現場を見据えた議論が必要と指摘した。

●地域ケア会議は制度化へ
 厚労省は多職種が個別ケースの分析から地域課題を見出す地域ケア会議について、包括的なケアシステムの実現に必要な手段だとして介護保険法で制度的に位置付けることを論点に挙げた。同会議の運営は現在、厚労省の通知に基づく。委員からは、同会議で取り上げる個別ケースとなる利用者の不在や会議の目的実現に向けた人材育成の必要性、さらに、会議自体の周知不足を指摘する意見があった。

 居宅介護支援事業者の指定権限を都道府県から市町村に移譲することも論点に挙げられた。市町村が介護支援専門員の育成や支援に、より積極的に関与することが期待されている。権限移譲について賛成の意見が出される一方、市町村の事務負担増を懸念する意見もあった。

 同部会は9月4日に開く次回会合で▽生活支援、予防給付▽認知症施策▽介護人材の確保―について議論する。(8/29MEDIFAXより)

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