【介護保険】地域包括ケアシステムの推進へ/社保審・介護保険部会が意見書
社会保障審議会・介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)は12月20日、1月以降13回に及ぶ会合の議論を終え、次期介護保険制度改革に向けた意見書を大筋で了承した。要支援者への予防給付(通所介護、訪問介護)の市町村事業への移行や一定以上の所得者に対する利用者負担の2割への引き上げ、補足給付の見直しなど、大幅な改革案を盛り込んだ。厚生労働省は意見書を踏まえ、2014年の通常国会への提出を目指し、介護保険法改正案を作成する。
次期制度改革では「給付の重点化・効率化」と「充実」を進める。重点化と効率化を図る中で、利用者負担の見直しも行う。これまで一律1割負担だった介護保険の利用者負担割合を、一定以上の所得がある利用者は2割に引き上げる。一定以上所得者の水準については、事務局が提案した年金収入ベース280万円以上のほか複数案を併記した。特別養護老人ホームなどに入所する低所得者への居住費・食費の補足給付制度については、新たに利用者の預貯金も勘案し、単身で1000万円以上、夫婦世帯で2000万円以上は対象外とすることを示した。
これまで全国一律の基準で実施されてきた要支援者への予防給付は、通所介護と訪問介護のみ、市町村の地域支援事業に移行する。事業単価や利用料は市町村が設定し、柔軟なサービス提供を行えるようにする。国は市町村による事業実施に向けて、ガイドラインを策定する予定。特養の入所要件は、入所待機者に中重度者がいる実態も踏まえ、原則要介護3以上とする。ただ、要介護1・2でもやむを得ない事情がある場合は、市町村が関与した上で入所することを認める。
サービスの充実については、市町村が実施する地域支援事業を見直し、地域包括ケアシステムの推進を図る。地域支援事業に、新たに在宅医療・介護の連携を進める事業を追加する。国や都道府県が支援し、地域の医師会と連携する取り組みが必要とした。これらの連携事業は15年度から施行し、18年度には全市町村で実施することを見込む。このほか地域支援事業には、認知症初期集中支援チームの設置など認知症施策の実施や地域ケア会議の実施も盛り込む。
会合で、大西秀人委員(高松市長、全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)は次期改革の鍵を握る市町村の立場から「まとめられた方向性については了承したい」とコメント。改革案の具体化に向けて医療・介護の連携を今後の課題に挙げ「連携ができないと地域包括ケアシステムは実質的に働かない」とした上で、実効性のある支援策を国に求めた。
他の委員からは、地域支援事業が適切に実行されることへの懸念や、介護人材の確保、認知症施策の着実な実行などを求める意見が複数出された。
●介護保険制度改革の主な項目
▽ 地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の見直し(在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、地域ケア会議の推進、生活支援サービスの充実・強化、地域包括支援センターの機能
強化)
▽地域支援事業の見直しに併せた予防給付の見直し
▽小規模通所介護の地域密着型サービスへの移行
▽住宅改修事業者の登録制度の導入
▽居宅介護支援事業所の指定権限の市町村への移譲
▽特別養護老人ホームの中重度者への重点化
▽ サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用
▽介護サービス情報公表制度の見直し
▽ 費用負担の見直し(低所得者の1号保険料の軽減強化、一定以上所得者の利用者負担の見直し、補足給付の見直し)
▽25年を見据えた介護保険事業計画の策定
(12/24MEDIFAXより)