【介護保険】予防給付の見直し、訪問介護と通所介護に限定/厚労省が見直し案
厚生労働省は11月14日の社会保障審議会・介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、要支援者に対する予防給付を市町村事業に移行することについて、対象範囲を限定する見直し案を提示した。これまで予防給付を全面移行するとしていたが、訪問介護と通所介護に限定する。
予防給付の見直しについては、市町村から▽市町村における受け皿整備は時間をかけて行うべき▽事業費抑制だけでなく、財源を確保すべき▽市町村に全てを任せるのではなく、市町村が取り組みを行いやすい制度設計をするべき―などの意見が寄せられていた。厚労省は市町村からの意見も踏まえ、2017年度末までに訪問介護と通所介護を市町村事業に移行し、そのほかの訪問看護や訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションなどの予防給付サービスは現行のままとする見直し案を提示した。
併せて、市町村事業を円滑に進めるために介護保険法に基づくガイドライン(GL)を策定することも示した。GLには事業を行う留意点を記載するほか、要支援者向けサービスの総費用額の伸びの低減を目標とすることも盛り込むとした。
12年度の介護予防サービス費を見ると、訪問介護は約1083億円(予防給付全体の23.1%)、通所介護は約1723億円(同36.8%)となっており、両サービス合わせると約2800億円で全体の約60%を占めている。
厚労省老健局振興課の朝川知昭課長は、訪問介護と通所介護のみを移行する方針について、住民主体のサービスなど多様な選択肢という点や、地域づくりと関わりの深いといった点に着目した結果と説明した。
見直し案に対し、市町村を代表する大西秀人委員(高松市長、全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)は「それはそれで良いのではないかと思う」とコメントし、GLによる適切な支援や財政措置が必要だとした。また、齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)が「GLの中身にサービスの質担保や懸念材料の払拭策を書き込むことが重要」と述べるなど、GLの重要性を指摘する意見が複数あった。
一方で見直し案は唐突だとして反対する意見や、これまでの議論と同様に市町村格差を懸念する意見も複数出た。
●若年性認知症に注目を/日医・高杉常任理事
高杉敬久委員(日本医師会常任理事)は、若年性認知症の問題について大変なハンディを負っているとし「もう少し注目してほしい。いわゆる老人対策とは違う」と指摘した。これに対し厚労省老健局認知症・虐待防止対策推進室の勝又浜子室長は、診断されてからの相談先がない、介護保険サービスにスムーズにつながらないといった指摘が挙がっているとし、一部都道府県で実施されている就労支援などの取り組みを拡大することが必要だとした。(11/15MEDIFAXより)