【介護保険】予防給付の移行、事業費の上限設定見直しも/介護保険部会  PDF

【介護保険】予防給付の移行、事業費の上限設定見直しも/介護保険部会

 社会保障審議会・介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)は10月30日、介護保険制度改革の議論が一巡したことを踏まえ、さらに検討が必要な項目について追加の議論を行った。厚生労働省は予防給付の地域支援事業への移行に関して、柔軟な運営が行えるようになり事業費の伸びが低減できると指摘。事業費の上限を見直すことも考えられるとし、事業の効率化で毎年約5−6%の予防給付費の伸び率を後期高齢者数の伸び率と同じ約3−4%程度に抑えるとした目標を提示した。

 厚労省は、全国一律で実施している予防給付と市町村が行っている介護予防・総合事業を組み合わせ、地域支援事業の「新しい総合事業」として2015年度からの3年間で段階的に実施する考えを打ち出している。市町村による「新しい総合事業」に移行した場合、全国一律の基準で実施されている予防給付は、市町村の判断で人員基準や運営基準、単価を決めることができるようになる。厚労省は、移行後は効率的な事業実施に努めることで事業費の低減が期待できるとし、上限見直しも検討が必要になるとの考えを示した。

 大西秀人委員(高松市長、全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)は地域支援事業への移行について「総論的な方向性は賛成で、市町村としてもしっかりやっていこうという気持ちは持っている」とあらためて表明。その上で「介護保険財政全体の効率化が図られるといった中長期的な観点から、地域支援事業の必要な事業量を考えるべき」と主張した。

 齊藤秀樹委員(全国老人クラブ連合会理事・事務局長)は事業費の上限設定について「これから取り組む市町村、それから利用者の立場からすると、不安要素を高めるだけの数値目標」と懸念を表明。移行期間の状況を踏まえてあらためて議論するべきだと指摘した。

 一方で、久保田政一委員(経団連専務理事)は事業費の伸び率を後期高齢者の伸び率に合わせる考え方は非常に重要と評価し、「伸び率抑制の考え方を取り入れ、実効性を担保していただきたい」と述べた。藤原忠彦委員(全国町村会長)は効率化による伸び率の抑制に理解を示しながら「市町村保険者の自助努力が非常に大きく、一方的に責任が委ねられる思いがある」とコメント。実際に効率化が図れるか疑問を呈した上で「制度の弾力的な運用ができれば可能性も出てくる」と述べた。

 老健局の朝川知昭振興課長は、複数の委員から後期高齢者数の伸び率を目標の根拠にした理由を問われたことを受け、要介護認定率が高まる後期高齢者の数に基づき必要な支援の財源を確保するという考え方で提案したと説明。事業費の伸び率の上限設定については「介護保険部会などでさまざまな意見をいただきながら考えていく必要がある」と述べた。(10/31MEDIFAXより)

ページの先頭へ