【事故調】「院内中心」と医療側、患者側は「故意見逃す」/事故調で平行線
厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(座長=山本和彦・一橋大大学院法学研究科教授)は10月26日、医療界も国民も納得できる医療事故調査の枠組みに向けて引き続き議論した。医療側の構成員も患者側の構成員も、第三者機関として中立の調査組織を設置する必要性は共有している。ただ、院内調査を中心とする仕組みを想定する医療側と、全ての診療関連死を第三者機関に届け出なければ故意による悪質なケースを見逃すと主張する患者側の隔たりは残っており、議論は平行線をたどった。
●「故意か否かの判定難しい」/患者側弁護士
患者側弁護士の立場から加藤良夫構成員(南山大大学院法務研究科教授、弁護士)が「相当悪質なケースが診療関連死と言われる中に紛れているのは事実。故意または故意と疑われるケースの判断はすぐにはできない。解剖は(火葬までの)時間との勝負」とし、「診療関連死は全て第三者機関に届け出ることにすべき」と述べた。宮澤潤構成員(弁護士)も「安楽死など、結果として故意犯が交じってくる可能性がある。区別は難しい」と述べた。本田麻由美構成員(読売新聞記者)は「患者側からすると、故意か否かを誰が判断するのか分からなければ、疑問が残ったままになる」とした。
●「故意の犯罪」とは分けて議論を/医療側
中澤堅次構成員(秋田労災病院第二内科部長)は「調査のための第三者機関を位置付けることは重要」としながらも、「故意ではないケースと、故意でやっている悪質なケースをまとめて“診療関連死”とし、疑いをかけられるようなことは、医療者の人権を侵害することではないか。完璧な故意の犯罪と、診療関連死は分けて考えてほしい」と訴えた。
有賀徹構成員(昭和大病院長)も「全てを疑われるようなことになっては、医療界で働く人は出てこなくなってしまう。私も人を助けるために医療の世界に来たが、全てを疑われては医師は続けられない。院内調査を重視して、どのように警察に見守ってもらうかを考えるべきではないか」と述べた。
高杉敬久構成員(日本医師会常任理事)は「医療においては患者に対する十分な説明と迅速な対応が必要。われわれは院内事故調を大前提に考えたい」と理解を求めた。
一方、山口育子構成員(NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「ここでの議論は、故意などは含まれていないと考えていた」とし「ここで話すのは、医療事故の調査の仕組み、その中で診療関連死の定義を決めて議論すべき」と指摘した。
次回は再発防止の在り方について議論する予定。(10/29MEDIFAXより)