【主張】自殺・貧困、深刻な事態と進む国民皆保険の空洞化  PDF

 厚生労働省が2011年日本人の平均寿命を発表した。男性は79・44歳、女性は85・90歳で、初めて男女ともに2年連続で低下した。特に女性は、1985年以来26年間守ってきた長寿世界一の座を香港に明け渡した。

 男性も昨年の世界4位から8位に下がった。

 厚労省は、2万人近くの人が亡くなった「東日本大震災が大きく影響した」と分析しているが、震災の影響がない場合を仮定して計算しても、女性は86・24歳になり、世界一の香港86・7歳には及ばない。影響として20歳代女性の自殺の増加も挙げられている。

 我が国の自殺率は国際的にも高く、韓国に抜かれたとはいえ、年間3万人以上が自殺する深刻な事態が14年にわたり続いている。日本人の死因の6番目が自殺である。最も多いのが中高年の男性で、原因の第一は「健康問題」次いで「経済・生活」問題である。年間3万人以上の自殺とは、毎日80人以上の人が自ら命を絶っているのである。若年層に拡がる自殺者をゼロにしたら、平均寿命は確実に長くなるはずである。

【主張】自殺・貧困、深刻な事態と進む国民皆保険の空洞化

 私たちは、日本の医療の優れた点を論じるときに、WHOの評価など様々な要因を国際比較して出された指標を引用している。そして安い費用で、高水準の医療を効率よく、全ての国民に公平に提供している皆保険制度を持つ有り難さを述べてきた。

 何より分かりやすい目安として、男女ともに平均寿命の長い長寿の国になったことを誇りにし、日本の医療がいかに国民の命と健康を守るのに貢献してきたかを強調してきた。

 保険証さえ持って行けば、いつでも、どこでも、誰でも安心して医療を受けられるといってきたことが、怪しくなっている。

 先に協会が行った受診抑制のアンケート結果では、一部負担金を払うお金がないために受診を控える人、払ってくれないので医療機関が未収金を抱え困る例が増えている。受診したくてもできないという、国民皆保険制度の実質的な空洞化が進行しているのである。

 緊急の政治課題である。

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