【主張】管理栄養士の配置義務化/小規模入院施設には配慮を  PDF

【主張】管理栄養士の配置義務化

小規模入院施設には配慮を

 2012年4月診療報酬改定で、入院料算定にあたって、栄養管理体制の実施が義務付けられた。「栄養管理実施加算」を届出、算定していなかった医療機関には、管理栄養士配置を2年間猶予する経過措置が設けられた。

 有床診療所や中小病院に対し、大病院と同様の施設基準が必要とされた。入院患者の栄養管理の必要性は理解できるが、一律な管理栄養士の配置義務化には疑問を持つ。

 管理栄養士は、栄養士法(昭和22年12月29日)法律第245号に定められる資格である。1962年(昭和37年)の栄養士法の一部改正時に設けられた。「厚生労働大臣の免許を受けて傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況・栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導、特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設における利用者の身体の状況・栄養状態・利用の状況等に応じた特別の配慮を必要とする給食管理及びこれらの施設に対する栄養改善上必要な指導等を行うことを業とする者をいう」(栄養士法1条2項)と規定されている。

 わが国独自の小規模入院施設である有床診療所は、わが国の医療の伝統に基づき、効率的に医療を普及させて、国民医療に大きな役割を果たしてきた。

 しかし、医療法ではこの間の運動の結果、48時間収容制限の撤廃が実施されたものの、臨時的あるいは代替的な機能しか認められていないのかと思うほど、入院点数が低く抑えられている。この法と実態の大きなギャップは改善すべき緊急課題となっている。入院医療をめぐる状況の変化の中で、有床診療所が地域医療に果たす役割はむしろ大きくなっている。

 有床診療所は、実態として無床診療所とは別の施設基準や人員基準を求められており、地域の入院医療機関として不可欠な役割を担っている。

 現在、分娩の約半数が産科有床診療所で取り扱われている。地域によっては主に病院が担っている場合もあるが、九州では7割以上、栃木県や滋賀県、鳥取県では6割以上を有床診療所が担っている。

 先に協会が府内中小規模病院・有床診療所を対象に行った管理栄養士配置に係るアンケート調査によれば、病床の規模が小さくなればなるほど管理栄養士の配置状況が少なくなった。また、専門科に特化するため、特別な栄養管理を必要とする患者の割合も少なくなり、栄養管理は医師によりできるという考え方の割合が高くなった。管理栄養士配置の義務化が継続されるならば、入院医療をやめることを考慮するとした有床診療所が8件あり憂慮される。配置の必要性や人件費の面から疑問の声があり一律の義務化は閉院を招く。個々で提供する医療内容の向上に努力を行っているが、従来通りの経営が行えるようさらなる施策の配慮が切に求められると考えている。

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