【主張】生保見直し問題に冷静な目を 社会保障に深刻な影響  PDF

【主張】生保見直し問題に冷静な目を
社会保障に深刻な影響

 政権が交代して2カ月が経過し、早速に社会保障費の見直しが始まっている。

 生活保護費の削減が決まり、これから3年間で約740億円(7%強)の減額がこの8月から実施される。

 2012年10月時点の生活保護受給者数は約214万人(約156万世帯)で過去最多となった。そのうち母子家庭中心に96%で受給額が下がることになる。

 生活保護の見直しは、受給者への直接影響だけに止まらない。まず連動して起こる最低賃金の引き下げが懸念される。最低賃金は憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために定められているので、生活保護基準が下がれば最低賃金の引き上げ目標額が下がる。従って最低賃金が下がる。影響は多大だ。

 また、生保基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法の利用料減額基準、高額療養費限度額基準、就学援助の給付対象基準など、医療・福祉・教育・税制の多様な施策の適用の目安になっている。今まで非課税世帯であったのに課税対象になり、福祉制度の適用を外される人も多発するだろう。

 「生活保護を受けていない低所得者層にも負担増をもたらしかねない関連制度が38に上る」と、民主党の長妻議員が削減反対集会で指摘し、拙速な政府の進め方を批判した。

 日々の診療において、医療券で受診し、過度の要求を行う生保患者さん達の目に余る振る舞いに閉口している医師は多い。高価なバッグや装身具から見てとれる生活実態から「なんでこの人が生保なん」と納得できない実例に憤るのだが、不正受給の割合は全体から見ればごく少数に違いない。一部の例を大仰に取り上げ騒ぎ立て、事の本質を隠す昨今のマスコミは怖いが、私たちは乗せられることなく常に冷静に判断しなければならない。

 母子家庭が増えている。不安定就労・低収入の中で、懸命に仕事しながら子育てに頑張る若い世帯にこそ温かい支援の手を大きくしたい。どの子にも健康で文化的な最低限の安心できる生活を保障してこそ、この国の未来の明るさが見えてくるはず。

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