【主張】民主党野田政権の裏切りと欺瞞/社会保障抑制がより鮮明に  PDF

【主張】民主党野田政権の裏切りと欺瞞

社会保障抑制がより鮮明に

 消費税増税・一体改革法が国会を通過した。マニフェストを反故にした民主党政権の重大な裏切りである。一体改革は15年前から財界が熱望し、自民党政権が進めていた政策の完結である。社会保障改革の内容も自民党修正案を丸呑みし、医療では社会保障制度改革推進法に「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること」等の文言が加えられた。国会では与野党野合により圧倒的賛成となったが、世論調査では過半数が消費税増税反対と国民の意思とはネジレを起こした。この民主党変貌の裏には政権交代後も組織と権力を死守した財務省がある。野田首相はこの官僚組織と大政翼賛会と化した国会(最大の敵が党内小沢派議員だった)、財界、マスコミを味方に付けて、民の声など怖くないと踏んだに違いない。

 法案が国会通過した直後、野田首相は国民にお詫びの言葉を述べた。これは逆に国民に対する愚弄である。また、「増税分は全て社会保障に使うことをお約束します」とも述べた。これは2重の意味で欺瞞である。一つは現行の保険財政等への国庫補助金を増税分と読み替えるだけのごまかしである。当初増収分は国債発行高を抑える予定であったが、自民党の揺さぶりで収入増とされそうだ。既に2年後の膨れる税収に群がる公共事業案件が目白押しである。二つ目は1年後の一体改革の具体化まで野田氏が首相で居続けることがほぼ絶望的と知りつつの空約束であることである。

 今後、社会保障改革の中身は社会保障制度改革国民会議で議論されることになるが、その基本理念は「自助・互助」で、医療は供給体制を抑制する仕組みの中で効率化・重点化・機能分化を進めることと規定されている。国会内の駆け引きでもともと悪い原案がより改悪された形だ。果たしてこれで国民に必要な医療が保障されるのか? 誘導政策のハシゴ外しが行われないのか? 国民にも、多くの医療機関にも困難が強いられるであろう。協会は憲法に保障された「権利としての社会保障の確立」の理念の下に、社会保障基本法の制定、国民本位の医療の充実実現を訴えていく所存である。

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