【主張】放射線の危険性に言及せず
小中高生向け「放射線副読本」
去年の10月に、文部科学省は今までの「原子力発電」副読本に替り新しく小学生、中学生、高校生向けに「放射線副読本」を作成した。副読本は、電力会社幹部が役員を務める財団法人日本原子力文化振興財団が委託を受け作成したものである。これを用いて生徒たちに放射線に関しての教育をしようとしている。
いずれの副読本も、まずは水仙から出ている自然放射線を写した見た目に美しい写真や、CT画像の3次元立体画像など、放射線は私たちの回りのどこにでも存在し、身近なさまざまな分野で利用されているというところから始まっている。さらに、「人類は放射線の存在する中で生まれ進化し、私たちは日常生活でも放射線を受けています」と放射線を身近なものに感じさせる手法をとっている。東京電力福島第一原発事故を経験し、今なお事故の収拾がつかず、多くの人々が避難生活を余儀なくされている中、福島原発事故の実態や放射線の人体に及ぼす危険性など全く言及していない。
また、日本が経験したヒロシマ、ナガサキそしてビキニなど、原爆による被ばくに関しても全く述べられていない。被ばくによって「遺伝子的影響が人に現れたとする証拠は、これまでのところ報告されていません」とまで述べている。
また、高校生用の副読本には、放射線に関しては、「リスクを完全になくしてベネフィット(便益)だけを得ることは不可能です」と被ばくを容認するかのような説明もある。
今、我々は脱原発を目指し運動している中、子どもたちはこのような副読本で教育されようとしていることに注意をしなければならない。私たちは、今回の福島原発事故、そしてヒロシマ、ナガサキ、ビキニで起きた事実から、放射線の危険性に関しての正しい知識を包み隠さず未来を担う子どもたちに伝え教えていく義務がある。そして、子どもたちはそれを知る権利がある。私たちは一部の都合だけで子どもたちの権利を奪ってはならないし、それを許してはならない。