【主張】応召義務にガイドラインを
3月10日に協会が開催した医療安全シンポジウムで「対応に苦慮する患者さんたち―応召義務について」を多数の参加者と共に検討した。今回は4人のパネリストのうち、特に東京大学の樋口範雄教授の問題提起に注目したいと思う。
他のパネリストからも報告があったが、医療現場では医師法第19条の応召義務に悩まされることがある。何度お願いしても医療費を支払ってくれない患者さん、それほど診療が必要ないのに、自分の病気・症状を盾に我儘放題、挙句の果てに医療機関の職員に暴力を振るうもの、現場には本音を言うとお断りしたい様々な困った患者さんがいる。
樋口教授の報告によると、戦後に応召義務に刑罰が科されなくなったこと、民事の問題は確かに残るが、医療機関は必要以上に応召義務に呪縛させられている様子が窺われるとのこと。更に、例えば、弁護士は気に入らなければ、クライアントの依頼を断っても、法的に何ら問題がないことを紹介し、数ある職業の中で、あたかも医師のみが無条件に患者を選べないが如く、勝手に世の中が回っている。
政府や行政はこの問題について、あまり関心がなく当てにはならないらしい。そこで、樋口教授は問題提起をされた。医療界が患者関係者と協力して、自主的に応召義務に関するガイドラインを作成してはいかがかと。国が動いてくれないのならば、我々でやるしかない。我々こそが、医療現場の真実を知っているのだから。
この問題は言うほど生易しいものでないことは、協会としても十分承知している。しかしながら、ボトムアップ方式で、現場から医療界のスタンダードを作ってみるのも良いかもしれない。京都府保険医協会の医療安全対策は、過去にも刑事弁護費用の適用など、医師賠償責任保険を新たに作り出してきた経験がある。もちろん、会員の声あっての協会活動なので、是非とも会員各位のご意見をいただきたい。