【中医協】白川氏「悪質請求は詐欺罪で告発を」/厚労省、12年間で20件
健保連の白川修二専務理事(中医協委員)は10月31日の中医協総会(会長=森田朗・学習院大教授)で、「患者をだまし診療報酬を巻き上げるような悪質な不正請求を行った医療機関については、詐欺罪で告発すべきだ」として厚生労働省の対応を強く求めた。これを受け厚労省は、詐欺罪で告発した事例は1997年度以降の12年間で20件あったことを明らかにした。
総会では、東京医科大茨城医療センターが12月に大学病院としては異例の保険医療機関取り消し処分を受けることを踏まえて、事務局の保険局医療課医療指導監査室が保険医療機関に対する指導・監査の現状について説明した。白川委員は、保険医療機関の多くは算定ルールを守っていると理解していると述べた上で、一部には非常に悪質な不正請求・架空請求・二重請求を行う医療機関が存在すると指摘。「弱い立場の患者をだまして不当な診療報酬を巻き上げる詐欺行為と思わざるを得ない案件が非常に多い」と述べ、こうした悪質事例への対応として厚労省が捜査機関に告発した件数も少ないと批判した。
医療指導監査室は、捜査機関への告発について、犯罪があると認められる場合に加え、関係書類の焼却・隠匿といった監査妨害や監査拒否があった場合、過払い額の返還に応じない場合に告発すると説明した。
白川委員は不正請求・不当請求が認められた場合の保険者に対する過払い額の返還がほとんどなされていないとも指摘し、悪質な医療機関の「やり得」にならないよう指導強化を求めるとともに、返還額についてもペナルティーを付けるべきとの考えを示した。
花井十伍委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、患者への返還についても国が把握している必要があると指摘した。
診療側委員も悪質な事案に対する厳格な対応について異論は出なかった。ただ、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、1レセプト当たりの平均点数が「高点数」であることを理由に行われる集団的個別指導について問題意識を示した。診療報酬による評価が高まっている在宅医療を提供する医療機関が対象となりやすく、対象になったことを気にする医師は多いとも指摘した。
●指導医療官不足も問題
全国的に指導医療官が不足している現状について安達秀樹委員(京都府医師会副会長)は、指導医療官の採用に一定の臨床経験を求めることや臨床医と比較して低い給与水準などが深刻な人手不足の原因となっていると指摘した。泉陽子医療指導監査室長も「全国的に大きな問題」との認識を示した上で、人材確保に向けた働き掛けを進めていきたいと述べた。(11/1MEDIFAXより)