【中医協】「72時間のみ」緩和策、13対1・15対1にも/中医協、支払い側は反発  PDF

【中医協】「72時間のみ」緩和策、13対1・15対1にも/中医協、支払い側は反発

 厚生労働省は12月6日の中医協総会に、次期診療報酬改定に向けて勤務医と看護師の負担軽減策を提案した。支払い側と診療側で意見が対立したのは、13対1・15対1入院基本料の算定病棟について、施設基準のうち看護職員1人当たりの「月平均夜勤72時間以下ルール」のみが満たせない場合の点数の大幅減を緩和する提案だった。

 現行の仕組みでは、7対1(1566点)と10対1(1311点)の算定病棟については、72時間ルールのみを満たせない場合、特別入院基本料(575点)への脱落を免れ、7対1特別入院基本料(1244点)、10対1特別入院基本料(1040点)を算定できる。

●夜勤時間の規制、診療報酬しかない/支払い側
 支払い側は、労働基準法で夜勤体制を規制する現状にない中で診療報酬で規定しているのが実情として、緩和措置に反対を表明。現行の7対1・10対1の緩和措置について撤廃を求める意見もあった。福井トシ子専門委員(日本看護協会常任理事)も緩和策に反対を唱えた。支払い側と日看協による反対攻勢の中で、診療側は医療現場が夜勤看護師の差配に苦慮している現状を訴え再考を求めた。

 福井委員は「13対1、15対1の夜勤時間数は過去のデータから60時間台で推移している。70時間未満なのにあえて緩和措置にもってくる必要はないのではないか」とした。「むしろICUなどの特定入院料では、一般病棟のような基準がないので、月の夜勤数が13−14回になっている」とし、こうした部分への対応が必要と指摘した。「医療資源の乏しい地域で72時間ルールが緩和されているが、13対1、15対1というもともと医療資源が乏しい中で、夜勤要件を緩和してしまうと夜勤が増える悪循環になっていく」とも問題提起し、別の仕組みを含めて慎重な検討が必要とした。

●72時間、通則記載は根本的に問題/診療側・鈴木委員
 診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、施設基準の通則に72時間ルールを入れたことが根本の問題とし、万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)も「福井委員が示した60時間台というのは、13対1、15対1のあくまで平均ではないか。厚労省案は、次期改定で具体化をお願いしたい」と要望した。

 支払い側を代表し花井圭子委員(連合・総合政策局長)は「今回の提案は反対」と明言。「看護師の離職理由に夜勤の問題が挙げられている。労基法では職種ごとの規制がない。診療報酬で規制することの是非論はあるだろうが、現時点では診療報酬で夜勤時間を制限していくしかないと思う」と述べ、福井委員の「労基法などに夜勤従事者の勤務基準の規定がない。診療報酬で夜勤勤務の基準を維持していただくほか方法はない」との発言に同調した。

 その上で花井委員は「本来なら7対1、10対1の緩和措置の撤廃だ。現時点では無理だが夜勤時間も64時間以下にすべきではないか」と注文を付けた。

 これに対し中川俊男委員(日医副会長)は「看護師の離職理由として夜勤の比率が高いとのエビデンスはあるのか。割合としては低いのではないか。看護配置単位にかかわらず、現場は夜勤の基準をクリアしようと必死だ。看護師の離職防止に配慮しながら対応している。13対1、15対1では、基準が満たせないと特別入院基本料の575点になり、医療提供がガタガタになってしまう」と述べ、「反対と言わず再考していただきたい」と訴えた。

 支払い側は、緩和措置である7対1特別入院基本料と10対1特別入院基本料の算定状況について質問。厚労省は12年7月時点で「ゼロ」と回答した。(12/9MEDIFAXより)

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