【中医協】「薬剤師へのインセンティブ」に厳しい目/後発品促進で中医協総会
薬剤師にはこれ以上のインセンティブは必要ない―。厚生労働省が4月10日の中医協総会に報告した後発医薬品の使用促進ロードマップに関する議論の中で、診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)が言い放った。三浦洋嗣委員(日本薬剤師会副会長)は、後発品の説明に時間がかかることや在庫管理の経済的負担について説明したが、嘉山孝正委員(全国医学部長病院長会議相談役)に「薬剤師が後発品の説明をするのは当たり前」と反論されるなど、薬剤師へのインセンティブに批判の目が向けられた。
厚労省が中医協に報告したのは、5日に公表した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」。2013−17年度の5年間で後発品の数量シェアを60%(旧計算方式で34.3%)以上にする数値目標が入っている。12年度までに数量シェア30%を目指すとした旧アクションプログラムから、数量シェアの計算方法を変更。海外先進国との比較をしやすくするため、後発品のある先発品をベースにする計算方式を採用した。
ロードマップは医療保険制度上の課題として「医師、歯科医師、薬剤師の後発医薬品への理解が進むような、さらなるインセンティブの検討が必要」と記載している。冒頭の鈴木委員の発言はここを指摘したもので「薬剤師さんはもういいんじゃないかという気がする。その辺は今後議論していくことになるのだろう」と問題意識を示した。
三浦委員は即座に反論。「現場では今でも『後発品って何?』という人が多い。患者の理解度は千差万別で説明には相当な時間がかかる。在庫をそろえる経済的な費用負担も大きい」とし、医療保険制度上のインセンティブが薬剤師にも必要であると主張した。しかし嘉山委員が「それはおかしい。薬効やジェネリックの説明をするのは薬剤師の当然の義務」と指摘し、説明業務はインセンティブの対象ではないとの認識を示した。
三浦委員は「返す言葉もない」と応じたが、薬剤師が現場で、患者の具体的な話を聞いた上で後発品を勧めている現状があることについて理解を求めた。
この関連では安達秀樹委員(京都府医師会副会長)が「後発品に積極的でない大きな理由の一つが品質不安だと示した後に、インセンティブで促進を図れと言われると非常にばかにされた感じ」と語り、インセンティブを利用する発想自体に不快感を示した。
●「60%は低い」矢内委員
新ロードマップについては、今日の総会から新たに委員に加わった矢内邦夫委員(全国健康保険協会東京支部長)が、60%という目標値を「低い」と切り捨てた。「新たなロードマップに期待していたが、残念ながら今回の目標値は少し低い。現在の流れを加速するのではなく、むしろ減速させる方向にあるのではないか」と疑問を呈した。
厚労省医政局の鎌田光明経済課長は「減速させることはないと思うが、国がもっと志を高くして取り組めということは受け止める」と応じた。(4/11MEDIFAXより)