「65歳以上が全員国保」で財政試算/厚労省、公費最大1.2兆円増  PDF

「65歳以上が全員国保」で財政試算/厚労省、公費最大1.2兆円増

 厚生労働省は3月8日の高齢者医療制度改革会議(座長=岩村正彦・東京大大学院教授)で、65歳以上が全員、市町村国保に加入した場合の医療給付費の財源構成の試算を示した。現行の後期高齢者医療制度の公費負担「75歳以上の医療給付費の約5割」を継続した場合、公費負担は9000億円減る一方、市町村国保は8000億円の負担増となる。一方、公費負担として「65歳以上の医療給付費の約5割」を導入した場合は、公費は1兆2000億円、市町村国保は5000億円の負担増となる。

 各保険者への財政影響は「75歳以上の給付費の5割」では、協会けんぽは1000億円の負担減となり、健保組合は2000億円、共済組合は1000億円の負担増となる。「65歳以上の給付費の5割」では、協会けんぽは8000億円、健保組合は7000億円、共済組合は2000億円の負担減となる。

 前回の会議で宮武剛委員(目白大大学院教授)が試算を依頼していた。宮武委員は「本来は都道府県単位で国保を統合することが自身の主張だが、現行の市町村国保に65歳以上の高齢者が加入した場合でも財政影響は同程度だろう」と述べた。その上で、公費負担を「65歳以上の給付費の5割」とした場合は「被用者保険にとってはありがたいが、公費は大きく増える。現政権が消費税を上げて賄うならともかく、難しいだろう」と指摘。「75歳以上の給付費の5割」のままなら「被用者保険にとっても大きな負担増はなく、公費の負担が減った分は負担が増える国保の支援に充てられる」と主張した。

 厚労省は今後、被用者保険の65歳以上加入者が▽被保険者と被扶養者とも被用者保険に加入した場合▽被保険者は被用者保険、被扶養者が市町村国保に加入した場合―などについても試算する考えを示した。

●都道府県単位で国保統合の可能性は?

 宮武委員の主張に対し、全年齢リスク構造調整による制度を主張する池上直己委員(慶応大教授)は「市町村国保の都道府県単位での統合には賛成だが、時間がかかり、現行制度の受け皿とはなり得ない」と指摘。都道府県単位でリスク構造調整をした上で、協会けんぽと現行の後期高齢者医療制度の統合をまずは進めるべきだと主張した。

 これに対し宮武委員は「市町村国保の統合は難しいが、やらなければ国保が倒れる。現政権も医療は都道府県単位で進めようとしており、県単位で国保を統合する動きも出てきている」と主張。リスク構造調整よりも可能性が高いとの見解を示した。(3/9MEDIFAXより)

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