「5対1看護」「64時間」を警戒/省内PT報告書で病院団体
厚生労働省「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」(省内PT)の報告書の発表を受け、「診療報酬上の対応」を警戒していた病院団体の幹部らは、本紙の取材に対し「『看護配置5対1』や『月平均夜勤64時間』を納得させる内容ではない」と口をそろえた。6月22日の四病院団体協議会でも意見交換する見通しだ。
●全職種にも取り組みを
日本病院会の堺常雄会長は「労働基準法の順守への言及はチーム医療に関わる医師など全職種の問題と捉え、ポジィティブに受け止めたい」と語った。
「看護師等(保健師、助産師、看護師、准看護師)にとどまらず、チーム医療に関わる全職種に対しても同様の取り組みを期待したい」とも述べた。その上で労基法での医師の勤務時間の過酷さもクローズアップされるとし「看護師等の省内PTの報告書だが、結果的に医師などチーム医療を支える職種の課題が少しでも『見える化』できればいいと認識している」と述べた。
●時間管理者・研修会「効果的ではない」
一方、全日本病院協会の西澤寛俊会長は「すでに病院では、組織的に労基法を順守しているにもかかわらず、労働時間管理者の配置や、関連の研修会などが盛り込まれている。すでに病院団体でワーク・ライフ・バランスの確保についても取り組んでいる」と指摘した。「看護師等に限定しての省内PTの報告書は、チーム医療の重要性がいわれている中で違和感を感じる」とも語った。「常勤看護師等の離職率が11.2%に対して、専門・技術的従事者の離職率は12.7%で、ほぼ同水準」との報告書の内容については「これは、ほぼ同水準ではなく、常勤看護師等の離職率が有意に低いと解釈できる」と指摘。「看護師等の労働環境の改善を図るには、看護師を増やすことが第一義であり、労働時間管理者の配置や研修会の開催が効果的な方策とは思えない」との認識を示した。
●医師の勤務環境改善が重要
日本医療法人協会の加納繁照会長代行も「看護師等の離職率11.2%は一般労働者の離職率16.4%に比べて顕著に低い。看護師は、医師の勤務環境に比べると、病院の中で優遇されている」とし、医師の勤務環境の改善も極めて重要な課題とした。さらに「報告書では、ヒアリングをした病院で紹介手数料を払う民間の職業紹介業者を利用している状況が多く見られたと言及しているが、民間病院としてはこの点が最も深刻な問題であり、重く受け止めてもらいたい」と指摘した。
●了承はしていない
日本精神科病院協会の山崎學会長は「報告は受けたが、了承したものではない」とし、「月平均夜勤72時間ルールの緩和を重ねて要望するよう四病協に提案していく」と述べた。(6/20MEDIFAXより)