「2200億円撤廃」なら負担増必要/財務省・太田主計官
財務省主計局の太田充主計官(厚生労働係担当)は3月13日、日本医師会の医療政策シンポジウムで講演し、医療費の伸びを毎年220億円削減する政府方針について「220億円削減はけしからん、給付は確保すべきと言うのであれば、国民合意の上で負担していただかないといけない」と述べ、方針撤廃のためには負担増が必要との考えを示した。
太田氏は、先進諸国の高齢化率や社会保障費、消費税率、公共サービスに対する国と地方の負担割合などのデータを示し、「基本的に社会保障費を支えるのは、その国の経済であり人口構成。経済や人口構成の変化により、制度も変わっていかないといけないが、日本は変えきれていない」と指摘。「社会保障費について、国で責任を持てと言う人が多いが、国で責任を持つということは、国民が責任を持って負担するということ。これを理解してもらわないと議論が進まない」と述べた。
さらに、社会保障費がこの10年で8兆700億円増加し、2009年度予算の一般歳出に占める割合が48% に達している一方、ほかの一般歳出は10年間で5兆500億円減少したと説明。負担増ではなく、ほかの支出を削って社会保障費に充てるべきとの考え方に対して「ほかの支出の中で切れる部分が少なくなってきているというのが厳然とした事実。それができないのであれば、その次のことを考えざるを得ない」とし、負担増はやむを得ないとの認識を強調した。
慶応大大学院の田中滋教授も「ほかの財源を削って医療費に回せという時代ではない」と指摘。日本が先進諸国と比較して消費税率が低いことに触れ「低負担は窓口での高い利用者負担を迫る。制度維持のためにどれくらい税が必要か、税をどう有効活用するかという議論をしないといけない」とした。
また、現在指摘されている「医療崩壊」が医療提供者側の声にとどまっている理由について田中氏は、(1)患者・住民との連帯ができなかった、(2)医療側の改革提示力の弱さ、(3)医療側の財源論の弱さ―の3点を指摘した。(3/16MEDIFAXより)