「2200億円」による医療崩壊「証明は不十分」/吉川・東大大学院教授
政府の社会保障改革推進懇談会で座長を務める吉川洋・東京大大学院教授は3月13日に開かれた日本医師会の医療政策シンポジウムで、社会保障費2200 億円の削減に伴う診療報酬の引き下げが医療崩壊の元凶であるとの考え方に対し、「診療報酬の平均的な引き上げが問題解決につながるとは思わない」と主張。日医に対しては「診療報酬の中身を徹底的に見直すことにリーダーシップを発揮してもらいたい」と注文を付けた。
吉川氏は「国民医療費が増えること自体はおかしいことではない」とする一方で、全体的な医療費の増加で医療崩壊の問題解決が図れるとする考え方は「まったく理解できない」と否定。日医の主張は「特定のビタミンが不足している患者さんに対して、医者が食費を増やしなさいと言っているように見える」と述べた。
これに対し日医の中川俊男常任理事は「平均して上げろとは言っていない」と反論。既にメリハリの付いた診療報酬になっているとし、「必要なコストに見合った点数を付けるべきと主張している」と述べた。さらに「不足しているのは特定のビタミンではなく主食」と切り返し、「医療機関の健全な経営は質の高い安全な医療を提供するための最低限の条件」と強調した。
ディスカッションの最後にも、吉川氏は「問題の立て方がいまだに理解できない。中川常任理事は『骨太の方針2006』に盛り込まれた社会保障費2200億円削減が地域医療の崩壊を招いたと確信していると述べておられるが、その証明は不十分だ」と主張。「診療報酬の平均的な引き上げで物事が片付くかのような話は相当乱暴な三段跳び。狐につままれたような思いだ」と述べた。
その上で「診療報酬の配分の見直しは医療改革の大きな柱だと確信している。診療報酬の平均的な引き上げだけの主張は極めてミスリーディングだ」と譲らなかった。(3/16MEDIFAXより)