「脳卒中後遺症」「認知症」障害者病棟等への入院を制限
10月1日から原則対象とせず
厚生労働省は、2008年4月の診療報酬改定に基づき、予定通り10月1日から「障害者施設等入院基本料」等の入院料を算定する際の施設基準を変更、病棟入院患者の一定割合(「障害者施設等入院基本料」「特殊疾患入院施設管理加算」は7割、「特殊疾患病棟入院料1・2」「特殊疾患入院医療管理料」は8割)を占めなければならないとされている対象疾患から「脳卒中後遺症」「認知症」の重度肢体不自由児(者)、重度障害者を除外する方針である。これに対し協会は反対の立場からこの程、対象医療機関に対し緊急アンケートを実施した。その結果、対象病棟の8割が病棟種別の変更を望まず、現状維持のためにやむを得ず非該当の患者の退院を進めるという苦渋の選択を迫られている現実が明らかになった。(アンケート結果は3・4面)
対象医療機関は、「障害者施設等入院基本料」「特殊疾患入院施設管理加算」「特殊疾患病棟入院料1・2」「特殊疾患入院医療管理料」の新たな施設基準を満たしている旨、あらためて施設基準の届出を行う必要があるが、前述の患者割合などをクリアできない場合には、入院料を別の施設基準に変更しなければならない。
これら「障害者施設等入院基本料」等は、施設基準において平均在院日数に関する要件がなく、重度の障害者や難病患者等の家庭復帰が困難な場合に、ある程度長期の療養が可能な入院施設として活用されている。「脳卒中後遺症」「認知症」により重度の障害を伴った患者も相当数入院していると考えられ、施設基準の該当患者要件から除外されると、これらの患者は療養場所が奪われ、新たな医療難民となる恐れがある。
保険医協会では、07年11月に「障害者施設等入院基本料」等の届出病院を対象に緊急アンケートを実施。その結果をもとに厚生労働省交渉を行い、中医協にも再考を求めるなどの反対運動を展開してきた。この交渉の中で保険医協会は、厚労省に対し「脳卒中後遺症」「認知症」を対象から除外する医学的根拠を求めたが、省として明確な回答はなかった。
また、これら「脳卒中後遺症」「認知症」の重度肢体不自由児(者)、重度障害者が一般病棟に入院している場合には、180日を超えると入院料が減額され、その減額分を選定療養として患者負担の対象にすることも決まっている(10月1日から)。
この中で唯一厚労省の目論見が変更されたのは、後期高齢者医療制度の患者が一般病棟に90日を超えて入院した場合の取扱いである。この患者については、検査・投薬・注射のほとんど・エックス線診断・処置の一部が包括される「後期高齢者特定入院基本料」を算定するとされたが、医療機関側が退院に向けた努力をしていることなどを記録上示せば、10月1日以降も引き続き算定対象から除外できることになった(厚生労働省保険局医療課通知、平成20年9月5日保医発第0905001号)。
しかし、これで「脳卒中後遺症」「認知症」の重度肢体不自由児(者)、重度障害者の医療難民化が防げるわけではない。介護療養病床全廃の方針も撤回されておらず、このままでは、慢性期を担う入院施設の絶対数不足に拍車がかかることになりかねない。保険医協会では実施のぎりぎりまで「障害者施設等入院基本料」等の取扱い変更「反対」を訴えていく。
【京都保険医新聞第2657号_2008年9月22日_1面】