「脱・公的保険依存」/経産省の産業構造ビジョン  PDF

「脱・公的保険依存」/経産省の産業構造ビジョン

 経済産業省は6月1日、今後の政府の産業政策の骨格となる「産業構造ビジョン」をまとめた。今後、戦略的に取り組む分野として「医療・介護・健康・子育てサービス」など5分野を挙げ、予算を重点的に投入。医療・介護では、関連サービスの拡大により、公的保険に依存した構造からの脱却を目指す。経産省は、同ビジョンを政府の新成長戦略の柱に位置付ける考えだ。

 同ビジョンは、経産相の諮問機関である産業構造審議会産業競争力部会が決定した。自動車産業に依存していたこれまでの日本の産業構造を「一本足打法」と表現し、多様な分野が成長を牽引する「八ヶ岳構造」に転換する必要性を強調している。

 医療・介護分野については、日常生活支援サービスへのニーズが増大しており、高齢化により高齢者が消費の主役になり得るとする一方、公的負担が増大していることや医療機関にニーズが集中していると指摘。医療・介護機関と関連サービスの連携の強化により、医療や介護、高齢者への生活支援関連産業を拡大する戦略を打ち出した。

 戦略では「すべてのサービス供給を医療・介護機関が行い、その財源も公的保険に依存することは医療・介護機関や国家財政の負担が加速的に大きくなることを意味する」とし、持続性確保のため、公的保険外の関連サービスを拡大し、公的保険への依存から脱却するとした。

 経産省は2010年度中に、関係機関やサービス事業者、連携推進のためのコーディネーターが参加するコンソーシアムを組織し、制度改正や環境整備に課題を抽出して厚生労働省と連携して課題の解決を行うとしている。

●健康情報、匿名化して活用へ

 さらに同ビジョンでは、医療分野でのIT化の必要性を指摘した。匿名化した健康情報を収集・分析することで、効果的・効率的な公衆衛生対策が可能となる上、医療技術や医薬品の開発が促進されると強調。IT化の促進のため、健康・医療・介護情報で標準化すべき項目の整理や、標準準拠電子カルテの導入促進支援が必要としている。

 来日する外国人を国内の医療機関で受け入れる「医療ツーリズム」については、受け入れ機能やサービス供給体制の強化を進めるほか、「医療滞在ビザ(仮)」の創設を提案した。(6/2MEDIFAXより)

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