「現時点の骨子」で再診料回復めぐり攻防
中医協は1月13日の総会で、2012年度診療報酬改定に向けて年末までの議論を整理した「現時点の骨子」を提示。2つの重点課題と4つの視点を盛り込んだ。
その中には診療側が求めている再診料引き上げの項目が盛り込まれておらず、診療側は再診料の回復を議論の俎上に乗せるよう要求。これに対して支払い側は反発。厚労省は議論を踏まえ、次回総会に骨子の取りまとめ案を提示し、了承が取り付けられれば1月18日にパブリックコメントを出したい考え。
●重点課題1 −勤務医の負担軽減−
「重点課題1」は、急性期医療の適切な提供に向けた病院勤務医らの負担軽減が柱。▽救急・周産期医療の推進▽病院医療従事者の勤務体制の改善などの取り組み▽救急外来や外来診療の機能分化の推進─などを盛り込んでいる。具体的には、13対1、15対1一般病棟入院基本料で、急性期後の患者らを受け入れた場合の評価の新設を記載。2次救急医療機関で深夜、土曜、休日の救急搬送患者に対する外来での初期診療を評価するため、新たな医学管理料を新設するとした。同一日の2科目の再診の評価の検討や、精神病床などに入院中の患者が透析などのため他医療機関を受診した場合の評価の見直し、地域医療貢献加算の再編成の検討も盛り込んだ。このほか、病棟薬剤師や歯科などを含むチーム医療の促進にも言及している。
●重点課題2 −役割分担と連携強化、在宅医療の充実−
「重点課題2」は、医療と介護の役割分担の明確化と、地域での連携体制の強化の推進、地域生活を支える在宅医療などの充実が柱。▽在宅医療を担う医療機関の役割分担や連携促進▽看取りに至るまでの医療の充実▽早期の在宅療養への移行や地域生活への復帰に向けた取り組みの促進─などについてまとめた。在宅での緩和ケアを充実する観点から、在宅医療を担う医療機関の医師と緩和ケア病棟などの専門の医師が連携して診療を行う場合の評価や、特別養護老人ホームの配置医師と、在支診、在支病といった外部の医師が連携して特養で看取りを行った場合に対する評価を盛り込んだ。医療依存度の高い介護保険優先の患者に対し、退院直後の2週間に限って特別訪問看護指示に基づき医療保険で訪問看護が提供できることの明確化も記載。▽在宅歯科、在宅薬剤管理の充実▽訪問看護の充実▽医療・介護の円滑な連携―も盛り込んだ。
●視点1 −充実が求められる分野−
充実が求められる分野を適切に評価していく視点では▽がん▽生活習慣病▽精神疾患▽認知症▽リハビリテーションなどの分野に言及。がん診療連携拠点病院加算について、悪性腫瘍の疑いで紹介された患者らについても算定できるよう要件を変更することや、精神科救急医療機関と精神科医療機関の連携に対する評価の新設などを盛り込んだ。リハビリ関連では、回復期リハビリ病棟入院料について、より充実した体制で重症な患者を受け入れ、状態改善や在宅復帰を十分行っている場合の評価の新設などを示した。▽感染症対策の推進▽生活の質に配慮した歯科医療の推進▽医療技術の適正な評価▽イノベーションの適切な評価―にも触れている。
●視点2 −患者が納得でき安心・安全な医療の実現−
患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療を実現する視点では▽医療安全対策などの推進▽患者に対する相談支援体制の充実など▽診療報酬点数表の用語・技術の平易化、簡素化─について記載。患者らに対する相談窓口の設置など患者サポート体制を充実するとともに、院内トラブルに対する具体的な対応策をあらかじめ準備し患者の不安解消に積極的に取り組む医療機関への評価の新設などを盛り込んだ。栄養管理実施加算、褥瘡患者管理加算については、算定している医療機関が多いことから、実施体制が全医療機関で確保されつつあることを踏まえて入院基本料と特定入院料で包括して評価を行うとした。
●視点3 −機能分化と連携で効率的な医療の実現−
医療機能の分化と連携などを通じて質が高く効率的な医療を実現する視点では▽病院機能に合わせた効率的な入院医療▽慢性期入院医療の適切な評価▽診療所の機能に着目した評価などを盛り込んだ。一般病棟入院基本料、特定機能病院(一般病棟)などの7対1入院基本料の算定要件(平均在院日数、看護必要度などの基準を満たす患者割合)の見直しを行うことも記載。一般病棟入院基本料、特定機能病院(一般病棟)の10対1入院基本料などについても、看護必要度などに関する評価を要件化し、看護必要度などの基準を満たす患者割合が一定程度以上の医療機関については評価を行うとした。
亜急性期入院医療管理料については、回復期リハビリ病棟入院料と比較しつつ、適切な評価体系に整理するとした。一般病棟入院基本料(13対1、15対1)算定の病棟に限って特定除外制度の見直しを行うことや、夜間に看護師が配置されている有床診療所について、有床診療所に即した緩和ケア診療や、ターミナルケアに関する評価を新設することも記載した。このほか▽医療の提供が困難な地域に配慮した評価▽医療機関間の連携に着目した評価▽調剤報酬―についても言及した。
●視点4 −適正化の視点−
効率化余地があると思われる領域を適正化する視点では「後発医薬品の使用促進」をはじめ▽平均在院日数の減少や社会的入院の是正に向けた取り組み▽医薬品・医療材料・検査の適正評価▽相対的な治療効果が低くなった技術等の適正な評価─を盛り込んだ。
人工腎臓については、包括されている医薬品の実勢価格やエリスロポエチン製剤などの使用実態を踏まえた点数の見直しを行うとともに、慢性維持透析の合併症などに対して有効性が明らかになりつつある新しい血液透析濾過についての評価を新設することが盛り込まれた。
コンタクトレンズに関する診療報酬上の評価については「保険医療機関等に対する指導・監査の検証及び再発防止に関する検討チーム」の中間報告書の指摘を踏まえ、検査に関する必要な評価を行いつつ、適切な請求が行われるよう施設基準や診療報酬請求における取り扱いについて見直しを行うとしている。
「平均在院日数の減少や社会的入院の是正に向けた取り組み」については、7対1入院基本料の算定要件の見直しや一般病棟の長期療養患者の評価などを挙げた。「後発医薬品の「使用促進」では、現行の加算の要件(数量ベースでの後発医薬品の使用割合が20%以上、25%以上および30%以上)について、22%以上、30%以上および35%以上に改めるとともに評価をついては軽重を付ける。医療機関での後発医薬品の使用を進めるため、後発医薬品使用体制加算の現行要件に「30%以上」の評価を加えることや、医師が処方せんを交付する場合には、一般名処方を行うことを推進することなどを挙げた。(1/16MEDIFAXより)