「現場は限界に近い」「早急な支援を」/日医委員が被災現場報告  PDF

「現場は限界に近い」「早急な支援を」/日医委員が被災現場報告

 日本医師会の災害救急医療対策委員会の委員を務める永田高志氏(九州大病院救命救急センター、姫野病院・福岡県)は3月16日の日医の会見で、東日本大震災の被災地となった福島県いわき市の状況を報告した。永田氏は「薬、水、ガソリン、食糧もない。現場としては限界が近づいている」と指摘。医師、看護師、医療スタッフの投入やインフラの整備、長期的な支援の必要性を主張した。「現場で涙を流した。正直に言って一度は心が折れた。それぐらいつらかった」と心情を吐露し、「態勢を整えて現場に再度、赴きたい」と述べた。

 永田氏は3月12日に勤務地の福岡県から東京都に移動し、3月13日にいわき市に入った。3月13日は避難所8カ所を巡り、避難所の保健師や担当者から情報を収集した。患者の状況や必要な医療ニーズ、人数や男女比、自分で移動できない災害弱者の把握に努めた。永田氏は「医療ニーズは非常に高い。どの避難所も約3割が高齢者だった。持参薬が尽きかけるなどの状況があった」と話した。

 3月14日は約2700人が避難するいわき市の草野小学校で診療に当たった。草野小では地元の医師会員と2人で処方箋の処方など約100人に最低限の医療を提供した。「逃げてきたために、正確な薬の情報がない人も多かった」と困難な状況を説明した。乳がんの末期患者のほか、免疫抑制剤やステロイドなど欠かすことのできない薬を求める患者もおり「非常に難しい判断があった」という。

 約1000人が避難するいわき市の四倉高校でも診療に当たった。いわき市保健所では被ばくの疑いのある住民のために、スクリーニングに協力した。90人のスクリーニングを行った結果、被ばくした住民はいなかったという。3月15日は東京都から来た医療チームと協力して活動した。

 永田氏は福島第一原子力発電所の事故については「住民は非常に冷静でパニックなどはなかった」と述べた。いわき市での放射性物質の影響については数値を示し「医師である私からみて何ら心配はない」とした。一方、外部からの支援者や医薬品流通業者が被ばくを恐れて現地へ入ることに懸念を持っているとし「少なくとも私はまた行きたいと考えている」と述べた。

 報道については「今の報道は原子力発電所が中心になっているが、少し横に目を向けると本当に助けが必要な方々がいる。数日のうちに危機的状況を迎える地域がある。ここを持ちこたえることが将来の日本の復興の足掛かりになると信じている」と述べた。(3/17MEDIFAXより)

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