「時間評価」導入で透析時間が延長/全腎協、08年度改定の影響調査  PDF

「時間評価」導入で透析時間が延長/全腎協、08年度改定の影響調査

 2008年度診療報酬改定で透析治療に「時間に応じた評価」が導入されたことで、12%の患者の透析時間が延長されたことが、全国腎臓病協議会(全腎協)の調査で明らかになった。透析時間は、全腎協の07年度の「血液透析患者実態調査」で4時間未満の比率が増加傾向にあったが、時間評価の導入によって4時間以上に延長される傾向が強まった。08年度改定が、透析時間の短縮に歯止めをかけるインセンティブとなった形だ。一方で、透析時間の変動に地域格差が存在することも分かった。全腎協は1月15日、調査結果を厚生労働省保険局医療課に提出した。

 透析時間は、生命予後に影響を与える可能性があり、特に短時間透析は合併症を起こしやすく、生存率を下げる要因として問題視されている。QOL維持の観点から4時間以上の透析が必要とされており、08年度診療報酬改定では、外来・人工腎臓(透析)の診療報酬を改定前の1日当たり一律2250点から、(1)4時間未満2117点、(2)4時間以上5時間未満2267点、(3)5時間以上2397点─とする時間区分での評価体系を再導入した。

 全腎協の調査は、改定前の08年3月と改定後の10月の透析患者の透析時間の変化を比較調査した。5155人の透析患者を対象に調査を行い、有効回答数は3251人(回収率60.6%)。回答した透析患者の平均年齢は60.9歳だった。

 調査結果によると、改定後に透析時間が延長されたと回答した患者は388人で、全体の11.9%に上った。延長した理由では、主治医の提案による延長が185人で、患者本人の希望による延長が164人、主治医と患者両者の判断が21人などだった。

 3251人の透析時間の推移を見ると、透析時間が「4時間未満」の患者は改定前の9.0%から改定後は6.4%に2.6ポイント減少したのに対して、「5時間以上」の透析患者の比率は15.0%から18.8%に3.8ポイント増加するなど、透析時間の延長傾向が見られた。透析時間が30分延長した患者の理由を見ると、医師の提案による延長が51%、本人の希望が38.9%。60分延長した患者では、医師の提案が43%に対し、本人の希望が45.3%と、本人の希望による延長の方が多かった。全腎協は「患者個々の身体状況や希望に見合った透析時間に変更されたことは一定の評価ができる」としている。

 一方、改定後に透析時間が短縮された患者は48人(1.4%) いた。患者本人の希望による短縮は25人、主治医の提案が22人だった。(1/16MEDIFAXより)

調査結果を受け、日医は再就業支援対策として、(1)潜在看護職員の情報交換や情報収集の場(窓口)の設置、(2)多様な勤務形態とコーディネート部門の設置、(3)現場復帰のための研修―が必要と指摘。再就業後の勤務を安定的にするためには、「短時間正職員」の考え方やシステムの導入も検討すべきとした。(1/15MEDIFAXより)

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