「改定の基本方針」おおむね了承/社保審・医療保険部会
社会保障審議会・医療保険部会(遠藤久夫部会長=学習院大経済学部教授)は11月24日、2012年度診療報酬改定の基本方針取りまとめに向けて、大詰めの作業を行った。厚生労働省保険局は10月26日の医療保険部会に提示した箇条書きの資料「改定の基本的認識、視点、方向等(案)」に手を加え、文章化したものを「基本方針(案)」として新たに提出。おおむね委員の了承を得た。今後は医療部会の意見も踏まえながら、医療部会・医療保険部会の連名報告書に仕上げる。厚労省は次回の両部会で基本方針の最終版を報告したい考え。その後、速やかに社保審から中医協に基本方針が提出される。
基本方針では、2つの重点課題として「医療従事者の負担軽減」と「医療介護の役割分担の明確化と地域連携強化、在宅医療の充実」を挙げた。さらに4つの視点として▽がんや認知症など充実が求められる分野の評価▽患者に分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療▽医療機能の分化と連携を通じて質が高く効率的な医療▽医療の効率化・適正化─の実現を盛り込んだ。
白川修二委員(健保連専務理事)は医療従事者の負担軽減に関連し、医師不足の診療科で計画的に人を増やす取り組みをさらに進めるよう要望した。「勤務医のアンケート調査を見ると、前回改定時に導入した負担軽減策があまり効果を発揮していないような印象がある」とし、「最大の問題は診療科で医師が不足していること。診療報酬で負担軽減しようとしても限界がある」と指摘した。
改定率をめぐる攻防もあった。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は「診療報酬改定率は引き下げるべきものと考えている」と発言。すると即座に鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)が「前回改定で10年ぶりに0.19%上がったからといって、もうよいでしょうというのでは日本の医療が崩壊する」と応じた。山下一平委員(日本商工会議所社会保障専門委員)は「診療報酬は現状維持をお願いしたい。効率化した財源の範囲内で強化を」と主張した。
また、和田仁孝委員(早稲田大法学学術院教授)は、早期退院の流れについて「患者側から見ると医療機関に見捨てられたような感覚になり、トラブルが起きる可能性はないか。患者にきちんと理解してもらうため、退院支援の相談などについても中医協で議論してほしい」と発言。遠藤部会長も「重要な指摘だ」とこれを支持した。(11/25MEDIFAXより)