「実調データの信頼性揺らぐ」/誤送付問題で中医協  PDF

「実調データの信頼性揺らぐ」/誤送付問題で中医協

 医療経済実態調査(実調)の粗雑な事務処理に中医協委員の不信感が募り、過去の実調データの信頼性まで問われかねない事態になっている。中医協は6月22日の総会で、被災した医療機関に調査票を誤送付した問題について意見を交わした。しかし、電話で確認した上で調査票を発送する施設のリストから、郵便番号の上2桁が「02」で始まる岩手県の医療機関が漏れていたことが新たに発覚。厚生労働省は陳謝した後、対応策を示したが、中医協委員の怒りは収まらなかった。

 総会の冒頭、外口崇保険局長は「管理監督責任を深刻に受け止めている。中医協委員や関係者に多大な迷惑を掛けたことを大変申し訳なく思い、おわびを申し上げる」と謝罪した。さらに厚労省は▽節目ごとに委託先に職員を派遣して状況確認する▽現場では口頭連絡ではなく文書による指示を徹底させる▽ダブルチェックや上長によるチェックの徹底─などの管理体制強化策を打ち出した。

 しかし、中医協委員からは「あってはならないこと」(森田朗会長=東京大大学院教授)、「あきれて物が言えない」(西澤寛俊委員=全日本病院協会長)などの批判が相次いだ。さらに鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や安達秀樹委員(京都府医師会副会長)からは「単純な人為ミスを起こす委託先は信用できない。過去の実調データの信頼性も揺らぐ」との厳しい指摘が飛び交い、支払い側の白川修二委員(健保連専務理事)も「真摯に反省してほしい」と厚労省に促した。ただ、白川委員は実調の重要性が依然として高いと指摘。「当初のスケジュール通りに集計・分析してほしい」とクギを刺すと、厚労省保険局も「10月に調査報告できるよう進めたい」と応じた。

 結局、総会では、被災地の医療機関向けに中医協委員連名の謝罪文を作成することや、不祥事を検証する組織を設置することを決めた。中医協委員の他に外部委員も交え、原因究明と再発防止策、実調データの信頼性を検証する。厚労省は過去のデータの信頼性を確保するため、現存する記録を基に、当時の入力作業のチェック項目が守られていたかなどを再評価する方向で想定している。

 調査会社の選定方法に対しても不信感があらわになった。西澤委員は「入札時の文書や、何社が応募したか、どのような基準で選んだかなど、過去3−5回分くらいの資料を示してほしい」と厚労省に迫った。今回ミスをしたみずほ情報総研については「委託先を代えるべきだ」などの厳しい指摘が相次いだが、厚労省は総会後、記者団に対して「みずほ情報総研を代えた場合、今回の実調のデータを使うのが難しくなるかもしれない」とコメント。スケジュールを考慮すれば、委託先の変更は困難との見方を示した。(6/23MEDIFAXより)

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