「収支の改善傾向」に異論相次ぐ/慢性期分科会で報告書案
中医協・慢性期入院医療の包括評価調査分科会(分科会長=池上直己・慶應大医学部教授)は7月29日、最終報告書の取りまとめ作業を行った。厚生労働省は、前回会合で示した「たたき台」に対する意見を反映して「報告書案」を出したが、中医協総会への提言内容や、病院収支動向の記載について修正を求める発言が相次ぎ、最終報告書を確定するまでには至らなかった。今後、池上分科会長と厚労省で報告書を修文し、各委員の了承を取り付けた上で最終版を確定させる。中医協総会には8月下旬か9月上旬頃に報告し、内容を審議する予定。
報告書には「中医協総会への提言」を盛り込む。今後高齢化が進展し、急性期入院医療のみならず慢性期入院医療の重要性が増すと予想される中で、中医協総会でもさまざまな調査結果を踏まえながら慢性期入院医療の充実を図るよう希望する─という内容。さらに、分科会の総意として「慢性期入院医療の実態を把握するため、一定期間後に横断調査を再度実施すべき」「病院に負担をかけず医療の質を検証するためにも、電子レセプトを使って詳細な分析が行えるようにしてほしい」といった内容も盛り込むことにした。
医療療養病床を持つ病院の収支状況を見た「コスト調査」の記載については意見が相次ぎ、報告書案を書き直すことにした。前回改定で看護配置25対1の療養病棟入院基本料の点数が引き下げられたにもかかわらず、この日の分科会に提示されたコスト調査の概要では、2009年6月から10年6月にかけて病院1施設当たりの平均収支が改善していた。コスト調査の客体数が少なく、収支が改善した理由は明らかになっていない。このため委員からは「病院の経営状況は何とか一息ついたレベル。非常に改善したわけではない」(武久洋三委員=博愛記念病院理事長)、「経営状況は悪くないと言われかねない」(三上裕司委員=日本医師会常任理事)などといった指摘が相次いだ。
このほかにも報告書には、認知症患者の検証などを盛り込んだ。「特に周辺症状(BPSD)がある患者は専門的なケアが必要なため、評価すべきという意見があった」「医療療養病棟におけるBPSDを含む認知症患者の実態把握方法や評価の在り方については引き続き検討すべきという意見があった」などと記載した。(8/1MEDIFAXより)