「医療は実験台ではない」「医療で外貨を」/規制改革でシンポ
「医療、介護、福祉は実験台にできない」「医療を外貨獲得につなげるべきだ」。2月21日に東京都内で開かれた医療関連サービス振興会のシンポジウムでは、規制・制度改革や国際医療交流などについて、医療関係者と経済関係者が持論を展開し、産業としての医療の在り方をめぐって意見を戦わせた。
●総合特区法案に反対/日医・羽生田副会長
日本医師会の羽生田俊副会長は、工業地域への病院建設を認めることなどを盛り込んだ総合特別区域法案を挙げ「特区というのは実験だ。われわれからすると人間の命を実験台にするわけにはいかない」と反対した。「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など、これを突破口として医療に入ってこようとする意図が感じられる」と警戒感を示した。その上で「厚生労働省はこれまで特区には反対してきたはずだ。本当に良いものなら全国でやればいい」と述べた。
全日本病院協会の神野正博副会長(社会医療法人財団董仙会理事長)は、羽生田副会長の意見に対して「私も賛成だ」とした上で、「良いことは全国レベルでやっていただきたい。地域ごとに良いことはたくさんある」と述べた。
●病院・医学部含め医療制度の輸出を/キヤノン研究所・松山氏
松山幸弘氏(一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、医療を経済成長の牽引役とする方策について「外貨獲得につながらなければ、マクロ経済的には何の意味もない」と主張。医療ツーリズムに対し「ものが小さくてほとんど役に立たないと思っている」と述べた。その上で「病院、もしくは医療制度のパッケージそのもの、医学部を含めた輸出をすべき」と提案した。
米国などでは大規模な病院グループによる非営利の医療事業体が大学と協力して中東、アジアに進出しているとし、「非営利の仕組みの中で、メガ医療事業体を日本でもつくるべきだ」とした。
「日本と米国、欧州などでは、非営利の考え方が違うのではないか」との神野氏の質問に対し、松山氏は「非営利というのは、生まれた利益が個人にいかないということ。これは国際基準だ」と説明した。羽生田氏は「日本ではどう医療を立て直すかということが大事だ。まず国内を何とかしなければどうにもならない」とし、国内の医療体制の整備が最優先とした。(2/22MEDIFAXより)