「出直せ介護保険!」シンポジウム 参加者アピール

「出直せ介護保険!」シンポジウム 参加者アピール

 来年4月の介護報酬見直しに向け、厚生労働省は、社会保障審議会・介護給付費分科会等における議論を進めています。地方自治体は、介護保険事業計画見直しに向けた議論を進めています。いずれの議論も「介護従事者確保」と「在宅療養」が最大のテーマになっているのが大きな特徴です。

 12月7日、京都の医療・介護関係者と市民が集い、介護保険シンポジウムを開催しました。

 シンポジウムでは、あらためて次の点が明らかになりました。

 (1)国は在宅療養の推進を言っています。しかし、それを支える条件がありません。地域や家族の状態は、この間進められてきた「構造改革」によって、大きく変えられてしまい、在宅療養を支える基礎的な力を失いつつあります。

 (2)同時に、施設での療養も保障されていません。入所できる施設の存在は、在宅療養を支えるためにも大変重要です。しかし、現実にはいつでも、誰でもが入所できる施設はありません。また、食費・居住費が原則自己負担であるため、経済的な事情から入所できない現実もあります。

 (3)介護保険制度は、その仕組み自体が在宅療養を支えうるものになっていません。また、在宅療養の保障には介護だけでなく医療が必要です。しかし、地域の医療提供体制は、在宅療養を支えるだけの条件が整っていません。

 (4)現在の「介護崩壊」状況が生まれた背景には、国民の生命や健康を守るための国の公的責任が「構造改革」によって大きく後退したことがあげられます。その中で介護従事者の困難も起きているのです。

 これらの状況を打開するためには、医療・介護にかかる費用を国が責任をもって負担・拡充すること、地方自治体が責任を持って高齢者を支える体制を構築することが求められます。

 本日のシンポジウムの結果を受け、以下の点を国に要望し、その実現を求めます。

1. 国は、「構造改革」にもとづく社会保障制度改革を中止し、もう一度老人福祉の理念に立ち返ること。

2.在宅でも施設でも安心して高齢期が送れるよう介護保険制度を見直し、同時に施設・在宅共にサービス基盤を確立・拡充すること。そのためにも、介護従事者の処遇を国の責任で改善すること。

3.介護保険を医療費抑制の受け皿にしないこと。医療は医療保険で給付し、介護は介護保険で給付する原則を確立すること。介護サービス利用者に対する医療給付制限は撤廃すること。療養病床の削減・廃止は中止すること。

4.地方自治体が高齢期保障の独自施策を展開できるよう国の責任で財政保障すること。地域包括支援センターの重要な役割に見合う人的・財政的保障を国の責任で行うこと。

2008年12月7日
「出直せ介護保険!」シンポジウム 参加者一同

【京都保険医新聞第2669号_2008年12月15日_2面】

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