「人体の不思議展」の開催中止を求める理事会声明
「人体の不思議展 最終公開」の開催が、12月4日から京都市勧業館「みやこめっせ」で予定されています。模型ではなく人体そのものを展示する「人体の不思議展」は、これまで全国各地で行われており、評判を呼んでいると聞いています。しかしながら、その度ごとに、人体標本を展示するにあたって本来考慮されるべきことがなされていないことが問題視されてきました。
何より問題なのは、展示されている遺体に対する尊厳が守られていないということです。人は死後であっても尊厳を持って扱われなければなりません。しかし、これまでの「人体の不思議展」では、全身標本が興味本位ともいえる姿勢をとらされた状態で展示されたり、触れる状態で展示されたりしています。また、入場料を徴収し、遺体や臓器を模したり写したりした関連商品の販売も行うなど、営利を目的とした興行として開催されています。このことは死体の商品化であり、これでは遺体に対する尊厳が守られているとは到底言えません。
その他の問題としては、インフォームド・コンセントの有無の不明確さです。遺体は「生前からの意思に基づく献体によって提供された」とされていますが、来場者などの第三者がその意思を確認できるものは、示されておりません。加えて、展示標本には胎児のものまであるとのことです。インフォームド・コンセントの有無に不明確さがあることは、重大な問題です。
加えて問題なのは、外国人の遺体でしか実施できない展示だということです。展示されているのは中国で作られた標本と言われていますが、日本人の献体であれば商業用展示の標本にすることは国内法に照らしてできません。このように外国人の遺体だから可能になるという展示を行うことは許されません。
また、外国で行われている同様の展示では、裁判所が違法と判断したり中止を命じたりしており、国内でも日本医師会や日本医学会が後援を取りやめ、日本解剖学会も「人体標本の展示に関するガイドライン」を発表するなど、「人体の不思議展」には問題があるとの認識が広がってきています。
私たちは、命と健康を守る保険医の団体として、人権と医の倫理を尊重する立場から、人権・人道上の重大な問題を含んでいる「人体の不思議展」の開催中止を求めます。
2010年10月26日
京都府保険医協会
2010年度第9回理事会