主張/医療安全シンポジウムにご参集を  PDF

 来る3月4日(土)、協会は「高齢者医療と介護に関わる医事紛争」をテーマに、今年度の医療安全シンポジウムを開催する。是非ご参集下さい。
 そこで、関連する訴訟事例を紹介する。
 2009年6月9日訴外76歳男Aは、Y病院に受診し慢性腎不全、胸腔水と診断され23日入院し、甲状腺機能低下、狭心症が追加され、週3回の人工透析には車椅子で移動し、24日の転倒転落アセスメントでは、合計2点・危険度Iと判定された。ベッドは高さ50cmの低いものを使用し、周囲の危険物は除去され、ドアおよびカーテンは常時開放されていた。7月2日心臓カテーテル手術を受け、パンツを自分ではけるようになり、ナースステーションから2番目に近い4人部屋の廊下から最も近いベッドに位置し、ベッド上で座ったり足を垂らしたりし、食事は介助なく摂取でき、ナースコールの使用は少なく、糞便が床や椅子やAの手についていたり、おむつが脱ぎ捨てられていることもあったが、胸水が改善し9日退院した。2回目入院中8月13日午前4時31分病院内廊下で転倒し、後頭部・尾てい骨を強打した。転倒転落アセスメントは合計8点・危険度Ⅱの判定で、17日長期臥床による筋力低下へのリハビリが立案され介助して実施された。ベッド臥床が多くなり、倦怠感や頭痛を訴え時々は鎮痛剤を、夜間は睡眠剤を服用した。21日の転倒転落アセスメントは合計12点・危険度Ⅲであった。病棟では、夜間宿直看護師は2人で各自5回程度病室を見回った。26日午前3時ころ看護師2人は物音を聞きAが普段昇降していたのと反対側のベッド傍でベッドと平行に頭は枕側と反対に仰向けに倒れているのを発見した。担当医に連絡しCT検査がなされ、頭蓋骨骨折なく左頭蓋内に血腫があり、脳室内穿破や正中偏移があり、7時12分Aは死亡した。脳外科医師は右側頭部に皮下血腫があり、左前頭葉および側頭葉表面にも血腫があり、当初外傷性と評価したが、病的な脳内出血が先行して発生したとも考えられ死亡診断書には「病死及び自然死」と記載された。

 そこで11年、遺族の妻X1子X2X3は、Y病院の転落・転倒防止義務として、①床上に畳の使用義務②離床センサー等使用義務③低床ベッドおよびマット使用義務④4輪歩行補助具使用義務⑤巡回義務⑥家族への付き添い機会提供義務―を主張し、その懈怠による死亡による損害2578万余円と、死因解明に病理解剖提案の懈怠など不十分な死因の説明による慰謝料45万円をY病院社長に請求して提訴した。裁判所は、頭部外傷による脳出血と認めたが、Yの義務違反を認めず、X1らの請求を棄却した(広島地判平成26・3・26確定、判時2230号55頁)。

 転倒転落問題を含め高齢者の傷害防止等、医療安全シンポジウムに是非ご参加下さい。

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