2010診療報酬改定こうみる(5)

2010診療報酬改定こうみる(5)

小児科(病院)/大規模小児科への集約化進む

京都市立病院小児科部長 川勝秀一

 今次診療報酬改定では、小児科は救急・産科・外科とともに大幅に評価された。小児科関連の概要は、日本小児科学会社会保険委員会の資料によると以下に示す通りである。

 (1)救急医療管理加算・乳幼児救急医療管理加算の引き上げ

 (2)地域連携小児夜間・休日診察料の引き上げ

 (3)院内トリアージ加算の新設

 (4)外来における乳幼児加算の引き上げ

 (5)新生児特定集中治療室管理料引き上げと新設、要件緩和

 (6)救急搬送料の引き上げと新設

 (7)小児入院医療管理料の再編成

 (8)特定機能病院の小児入院医療管理料1、2の算定

 (9)救命救急入院料および特定集中治療室管理料の小児加算の新設

 (10)NICU入院患者への退院調整加算の新設

 (11)新生児治療回復室(GCU)管理料の新設

 (12)超重症児入院診療加算の見直しと拡大

 (13)在宅重症児の受け入れ加算の新設

 (14)障害者施設等への受け入れ加算の新設

 小児入院医療管理料2(4000点)の新設は、従来小児科常勤医20人以上が小児入院医学管理料1(4500点)で5人以上が2(3600点)であったものに、その間の点数が設けられたものであり、大規模小児科には大きな増点になる。特定機能病院もこれを算定できるようになったことは、大学病院にはさらなる朗報と考えられる。

 新生児特定治療室管理料の引き上げ(8500→10000点)もあったが、特に新生児特定治療室管理料2(6000点)の新設は、NICUを開設すると小児救急患者を小児科医が診察できず、他科の救急担当医が診なければならない状況が改善されるため、新たなNICU開設の追い風になると思われる。

 ここ数回の診療報酬改定に共通することだが、大規模な小児科に有利な改定で、日本小児科学会の目指す集約化を後押ししているように思われる。

小児科(診療所)/新設の加算は小児科外来診療料に包括
小児在宅医療の不合理も改善されず

理 事 長谷川 功

1、初・再診料

 初診料270点は据え置きで、乳幼児加算(6歳未満)が72点から75点に引き上げられた。電子化加算3点が廃止された。再診料は71点から69点に引き下げられたが乳幼児加算(6歳未満)が35点から38点に引き上げられた。

 再診料に係る加算として地域医療貢献加算(要届出)と明細書発行体制等加算(要届出)が新設された。各診療科でその不合理な点が議論されているが、小児科においても事情はほぼ同様である。小児科外来診療料(3歳未満)を算定する場合はこれに包括されたため、地域医療貢献加算と明細書発行体制等加算は算定できない。地域医療貢献加算を算定する診療所は少ないのではなかろうか。明細書の発行はレセプト電子請求を行っている診療所では7月1日から義務化されるが、明細書を希望する患者はごく少数であることが予想される。

2、医学管理等

 小児科に関係する特定疾患治療管理料(小児科療養指導料、乳幼児育児栄養指導料、小児特定疾患カウンセリング料、てんかん指導料、特定薬剤治療管理料など)はすべて据え置きになっている。小児科外来診療料も据え置きである。

3、検体検査判断料等

 小児科で比較的頻用される検査では、末梢血液一般検査が1点引き下げられ21点となり、生化学検査(1)の包括項目点数では5項目以上7項目以下100点が95点に、8項目又は9項目が109点から104点に、10項目以上が129点から123点に引き下げられた。検査検体判断料は据え置かれたが静脈採血料は2点引き上げられた。

 外来迅速検体検査加算が1項目につき、5点から10点と引き上げられた点は注目すべきである。これは外来患者に対して実施した検体検査であって、検査実施日のうちに結果を説明した上で文書により情報を提供し、その結果に基づく診療が行われた場合に5項目まで算定できる。例えば、自院で血液一般検査、CRP検査、試験紙法による尿中一般物質定性半定量検査そして尿沈渣顕微鏡検査を実施した場合、10×4点算定可能である。ただし、小児科外来診療料を算定する場合は同時算定できない。

4、在宅医療

 往診料が70点引き上げられ、720点となった。在宅患者訪問診療料に、3歳未満が対象の乳幼児加算(200点)、3歳以上6歳未満が対象の幼児加算(200点)が新設された。在宅患者訪問看護・指導料及び同一建物居住者訪問看護・指導料に、3歳未満が対象の乳幼児加算(50点)、3歳以上6歳未満が対象の幼児加算(50点)が新設された。

 在宅療養指導管理料に在宅小児低血糖症患者指導管理料820点が新設された。12歳未満の小児低血糖患者であって、薬物療法などを行っている、または療法終了後6カ月以内の患者に対して指導管理を行った場合に算定できる。高点数であるが、この疾患の発症頻度は日本国内で年間30例程度といわれており、一般の診療所で遭遇することはまずないであろう。

 以上の変更は新生児、乳幼児の入院医療から在宅への流れを作る一環として新設された点数である。小児の在宅医療を推進する点からは多いに評価できる改定であるが、小児在宅医療を行う診療所が極めて少ないこの現状に果たして変化をもたらすことができるかは疑問である。

 「小児科外来診療料を算定している場合、訪問診療を行っても訪問診療料を算定できない」という不合理を当協会は以前から指摘し、改善を要望してきた。小児科診療所の多くが出来高ではなく小児科外来診療料を算定していることを考えれば、この不合理が解消されない限り、国の思惑通りの小児在宅医療推進は困難であろう。

まとめ

 一般的な小児科診療所では患者の大多数は6歳未満の乳幼児であり、小児科外来診療料を採用しているかどうかに関わらず、乳幼児加算が3点引き上げられたことによって再診料の引き下げは相殺される。また、小児科外来診療料を採用している場合、乳幼児加算は算定できないが、薬価の引き下げにより、その分わずかではあるが収入増に傾く。さらに、新設された加算はすべて小児科外来診療料に包括される。一方、小児在宅医療における乳幼児加算の新設は評価できるものの、その恩恵をこうむることができる診療所はごく少数である。以上より、今回の診療報酬改定が小児科診療所に与える影響は小さいと考えられる。

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