09年度地区懇始まる  PDF

09年度地区懇始まる

 京都府保険医協会は、11月2日の伏見医師会との懇談会を皮切りに、09年度の地区医師会との懇談会をスタートさせた。本年度のテーマは「これからの医療制度について」。9月に政権交代を果たした民主党が描く「国のかたち」をはじめとして、民主党の医療における政権公約のポイントと今後の方針を解説、その上でその実現に向けての条件づくりや協会がめざす方向性について説明した。その他、診療報酬改定情報や、レセプトオンライン請求義務化問題関連についても情報提供を行った。今後開催予定の懇談会についても、タイムリーかつ会員にとって有意義な情報を提供していく。できるだけ多くの会員にご参加いただき、協会がより身近な存在となるよう、忌憚なきご意見を頂戴したい。

伏見医師会と懇談 11月2日 伏見医師会館

民主党の政策について意見交換

22人が出席して開かれた伏見医師会との懇談会
22人が出席して開かれた伏見医師会との懇談会

 協会は11月2日、伏見医師会館において伏見医師会との懇談会を開催した。地区から17人、協会から5人が出席し、中山治樹副会長の司会で進められた。冒頭、依田純三会長は、「民主党政権が発足して1カ月半。社会保障の崩壊に歯止めがかかるのではないかと期待もしている。一方で、マニフェストの内容はわからないことも多く、協会からの情報提供を楽しみにしている。本日は忌憚ない意見交換を行いたい」と挨拶した。その後、関理事長の挨拶、協会からの情報提供に続き、意見交換を行った。

 地区から、民主党が掲げる歳入庁の創設に関して、過去の年金のずさんな情報管理に言及し、「加入者が特定できない原因の一つに、“人名管理”が挙げられる。同姓同名、複雑な名前、戸籍登録のない名前などは“番号管理”によって、解決されることも少なくないのではないか」と社会保障カードや国民総背番号制を視野に入れた形での、年金の番号管理に賛成する意見が出された。

 これに対し協会から、「社会保険庁の抱える諸問題を解決しないまま別組織を創設し、新たな制度を導入しようとすることに問題がある。また社会保障カードには、医療・年金・介護といった様々な個人情報が集積されている。危惧されるのは、情報の漏えいはもちろん、最終的には社会保障にかかわる個人の出入を管理することにより、結果的に社会保障費や医療費の削減が目論まれていることである。レセプトオンライン請求も社会保障カード導入への第一歩であり、阻止しなくてはならないと考えている」と解説した。

 次に診療報酬改定について地区から、「勤務医の待遇改善は必要である。しかし全体の財源が変わらぬまま、開業医から勤務医への財源移行だけがなされるのではないか懸念している」との意見があり、協会から、「民主党は診療報酬10%アップを掲げているが、それは勤務医を手厚くする意味が大きいと考えられる。私達としては、中医協委員に就任した府医の安達副会長に期待している」と述べた。

 さらに、ワクチンについて地区から、「ワクチンに関する具体的な組織作りと活用を期待したい。また、ヒブワクチンは自費診療扱いであり、保険診療できるよう要望してほしい」との意見があり、協会から、「今後、ヒブやインフルエンザを含めたワクチン問題は、会員の意見や要望を聞いた上で、小児科医会とも相談しながら厚労省交渉を実施していきたい」と説明した。その他、国保の都道府県単位化についても意見交換を行った。

中京東部・中京西部医師会と懇談 11月4日 京都府医師会館

医療費の財源問題等で議論

24人が出席して開かれた中東・中西医師会との懇談会
24人が出席して開かれた中東・中西医師会との懇談会

 協会は11月4日、中京東部・中京西部医師会との懇談会を開催。地区から18人、協会から6人が出席し、中京西部医師会・丹生智史庶務担当理事の司会で進められた。冒頭、中京西部医師会・尾崎信之会長は、「9月に民主党政権が誕生した。協会は民主党とのパイプが太いと伺っており、本日の情報提供を楽しみにしている」と挨拶した。その後、関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。

 はじめに地区から、1971年に医療を国営化したスウェーデンを例に挙げ、「財政状況から考えれば日本も国営化しかないのではないか。一方で日本は医療過剰な部分があり、医療費を減らすことも考えなくてはならない。このままでは医療崩壊を待つばかりである。先を見据え、財源問題に真剣に取り組まなくてはならない」との意見があり、協会から、「スウェーデンは、現在のスタイルを構築するプロセスの中で、高負担の代わりに高福祉を保障することで国民の信頼を得ていった。日本の医療においても参考にすべき部分は多いが、まずは検査の重複を避けるなどが先決である」と述べた。また、財源については、「在り方を再検討する必要があるが、最終的には消費税しかないのではないか」との意見や、「その前に下げられた所得税の累進課税を見直すべき」「納税者番号を整理することで税収入は増加する」など様々な意見が出された。

 これらに対し協会は、「消費税増税に反対の立場である。民主党は、『コンクリート』から『人』へと謳っており、まだまだ予算を削れるところはあるとしている。また、納税者番号の導入は、納税額の一括管理による利便性、簡素化が図れるものの、納税額に応じて医療・介護サービスなどの給付に差がつけられる可能性を孕んでおり、大変危惧している」と述べるとともに、「民主党にマニフェストすべての実現は期待しないが、我々の権益にかかわる内容から、順に要求していきたい」と強調した。

 また、後期高齢者医療制度について「75歳以上という年齢での線引きは、ある意味で公平性が高まったと捉えることもできる。なぜ協会は廃止の立場を示すのか」との意見に対し、後期高齢者医療制度の問題点の一つとして、「広域連合の経営が赤字になれば、保険料の高騰につながったり、診療報酬の1点単価に地域間格差が生じたりする可能性がある」とし、問題であるとの認識を示した。

 その他、レセプトオンライン請求義務化についてや、コミュニケーション委員会についてなど、意見交換を行った。

 最後に、中京東部医師会・新屋久幸会長から、「国や自治体に実態はなく、我々一人ひとりが構成するものである。国に要求したり、変革を求めることは、我々自身に要求、変革が求められていることではないか。今後もよりよい医療に協会、中京東部・中京西部医師会が連携していきたい」と挨拶し、閉会した。

下京東部医師会と懇談 11月5日 ホテル日航プリンセス京都

実調データの恣意性について議論

20人が出席して開かれた下京東部医師会との懇談会
20人が出席して開かれた下京東部医師会との懇談会

 協会は11月5日、下京東部医師会との懇談会をホテル日航プリンセス京都で開催した。出席は地区から15人、協会から5人。下京東部医師会・垣田時雄副会長の司会で進められた。

 冒頭、小山秀樹会長は、民主党執行部はマニフェストに縛られすぎており、地域医療にも疎く、誤った先入観を持って行動しているように感じる。中医協委員については、今回の人事で医師会関係と病院代表の構成比率が逆転され、開業医にとっては不利な状況になった。このままでは医療現場からの意見が反映されにくくなるのではないかと危惧する。診療報酬改定においても、昨年度と同様に病院側に手厚く配分されるようだ。新聞紙上にも開業医の収入は勤務医の1・7倍と誤った内容が報道され、意図的に医療費総枠に抑制をかけようとしている、と挨拶した。

 意見交換では、地区より、医療経済実態調査では、開業医と勤務医を対立させて、開業医の診療報酬を削減しようとする意図が汲み取れる結果になっている。この調査は、一体どのような階層が対象となっているのか。比較的所得の高い層で調査をすれば、開業医の収入が勤務医の1・7倍という結果になる可能性はある。集められたデータを恣意的に利用されているので、医師としてこの調査に協力しないという意思表示をするべきではないか。また、医療側として、開業医の実態をきちんと反映したデータを出して、たとえ開業医の収入が勤務医の1・7倍でも決して高くないということをアピールしていかなければいけない、という意見が出された。

 協会からは、医療経済実態調査はまず概算のデータが出され、詳細なデータはかなり後になってから出される。そもそも平均値で議論することに無理がある。協会では前回、前々回とデータを分析したが、最頻値と中央値はかなり低い数値であった。一部の高所得者によって平均値が上がっている状況である。経営者という立場の開業医と、被用者という立場の勤務医の年収を単純比較することに合理性は見いだせないと説明した。

 また、次回診療報酬改定についても、前回と同様に開業医から勤務医へ診療報酬の財源がシフトされるのではないか、と危惧する意見が出された。協会としては、財源問題など詳細なことは決まっていない。今後、中医協で点数配分などが話し合われるので、今回中医協委員に選出された安達委員には開業医代表として、これ以上開業医の診療報酬が削減されないように頑張ってもらうしかないと答えた。

 その他、京都府の「あんしん医療制度研究会」の検討状況やレセプトオンライン請求義務化問題について、意見交換を行った。

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