TPP参加表明に抗議談話  PDF

TPP参加表明に抗議談話

 野田佳彦首相は11月11日、TPP(環太平洋連携協定)について、参加国との交渉プロセスに参加する方針を表明。これに対し、協会は15日、垣田さち子副理事長(政策担当)の抗議談話を発表した。

談話/政府のTPP交渉参加表明に医療者の立場から強く抗議します

 東日本大震災から7カ月を経た2011年11月11日、政府はTPP(環太平洋連携協定)交渉への参加を表明しました。農業団体、医療関係者などが広く危険性を指摘し、反対世論が広がる中での参加表明でした。

 私たち京都府保険医協会は、今回の交渉参加表明に抗議します。その理由は、以下の通りです。

 TPPは加盟国間における例外なき関税の撤廃を進める協定と言われます。しかし、TPPは「関税」だけでなく、あらゆる「貿易障壁」(医療で言えば、公益性や安全性確認のための輸入・参入規制や管理ルール等)の撤廃をも求める協定です。例えば、2011年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書(2011年10月25日外務省)では、「厳格な規制によって、外国事業者を含む営利企業が包括的サービスを行う営利病院を提供する可能性など、医療サービス市場への外国アクセスが制限されている」と問題視する指摘をしています。TPPとは、このような日本の国内法による規制の撤廃を進める協定なのです。

 わが国には公的医療保険制度があり、営利企業参入が制限され、なおかつ、保険医療機関に支払われる報酬は、どこの誰に対して行われた医療に対しても、みな同じ公定価格で支払われています。この制度を貫くのは「誰も排除しない医療の保障」です。私たち医療者は、患者さんの経済力の有無に関わりなく全力で医療を提供します。わが国の公的医療保険制度は、その医療者の思いを体現した制度なのです。

 しかし、TPP加盟各国に、わが国と同様の公的医療保険制度を持つ国はありません。殊にイニシアチブを取るアメリカは、医療をほぼ完全に市場原理に委ねています。そこでは、医療を受けるために多額の費用が必要であり、お金のあるなしが生命に直結しています。TPP加盟の危険性の第一は、この命と医療の平等という皆保険体制の理念が崩壊するかもしれないという点にあります。

 また、政府は、TPPに参加しても公的医療保険制度は守れると言います。しかし、政府は自ら「新成長戦略」において医療の産業化を志向し、富裕層向けの医療ツーリズムや病院システムの輸出などを推奨しています。

 日本の公的医療保険制度には、すでに保険外併用療養費という混合診療の仕組みが組み込まれていますが、TPP参加後は、この仕組みを使って薬剤や医療材料、治療技術について、海外で承認済みのものについては、国内での安全確認を簡略化して使えるようにせよという要求を受け入れざるをえなくなる危険性があります。保険外併用療養費は、公的医療保険制度の枠内でさまざまな市場化策を具体化するうえで、使える仕組みなのです。それが今、押しとどめられているのは、医療の公益性と安全確保を重視する医療者と国民の意識に配慮せざるをえない厚労省などによる輸入・参入規制がかけられているからです。この規制が完全撤廃されたら、日本の医療の公益性と安全性は確保できません。

 私たちは、医療者として、引き続き公的医療保険制度を守りぬくため全力をあげるとともに、私たちの不安を無視してTPP参加交渉を進めようとしている政府の動きに対し、強く抗議し、交渉からの撤退を求めます。

2011年11月15日

京都府保険医協会

副理事長 垣田さち子

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