読者のひっち俳句/隆英 選

読者のひっち俳句/隆英 選

入選

茸狩鹿の足跡あるばかり

珠子

佳作

トンネルを抜ければ紅葉はじまれる

暮れゆきて比良の山々秋がすみ

風花来る藁葺の里に山越えて

善郎

秋風とともに訃報やこの友も

善郎

顔なじみ混れる時代祭かな

絢子

言ひたきこと心に戻す良夜かな

絢子

老の身の早目早目の冬支度

珠子

白川や勇の歌碑に散る柳

珠子

念仏の声堂に満つ初時雨

青磁

ゆく秋や友なつかしきクラス会

青磁

(順不同、仮名づかい新旧自由)

短 評

 珠子さん、茸はもちろん松茸でしょうが、全くないと言ったら身も蓋もないけれど、「鹿の足跡あるばかり」だということで間接的にそれを表現してあり、これが俳句の手法です。私も田舎に山があって昭和二十年代までは少しは生えていましたが、今は全くとれません。墓参りを兼ねて家族数人で帰って2、3本でしたから1本5万円です。数年前1本も見つからなくて山へ行くのをやめました。

 善郎さん、風花(かざはな)は山の北側に雪があって、その雪が風で南の谷や村落に桜の花びらのように、はらりはらりと落ちてくるものを言います。

 青磁さん、「自己分析」という前書の句に、思わず吹き出しました。「両親の失敗作か秋の果て」とあったからです。私の場合、成功作とはいえないが、さりとて失敗作と言っては両親に失礼かなと思います。皆さんはいかがでしょう。

選者吟

手を出せば零余子 ぬかご ほろほろ放れけり

隆英

<応募要領>◇ハガキに5句以内、未発表のもの。応募作品は返却致しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月15日締切。毎月第1週号に発表します◇入選者には記念品贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります◇1月は休載します。

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